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ふたり
【幼馴染 恋愛小説】

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ふたり【それから―T】-1

「俺、出るから。のぼせない内に上がれよ。」

『……うん。』


エリカの泣き声が収まるのを待って、俺は洗面所を後にした。

俺は、浮かれるよりも先にしなければならないことがある。

俺の口から伝えなければならない。


あかねに。

…全てを。

…………




まだ胸が苦しい。

さっきエリカに好きだと言われたとき……それはもちろん、嬉しかった。

でも同時に、ぎゅうっと痛いくらいに胸が締め付けられた。
その苦しみは、今も続いている。

さっきのはひとつの気持ちを断ち切った痛み。
今の苦しみはそれに対する胸のつかえ。


その苦しみを乗り越えるため、俺はリビングで眠るあかねに声をかけた。

「ん……」

顔を隠すように丸まって寝ていたあかねは、顔を上げて時計を見る。

「ふぁ……。おはよう。お兄ちゃん」

「おはよう。……って言ってももう昼過ぎてるけどな。」

「あはは。そうだね……。」

あかねの目が腫れぼったいのは、きっと寝起きだから。
俺はそう思っていた。


「あかね。……話したいことがあるんだ。ここじゃなんだし、二階の部屋に行こう。」

俺は床を大の字で支配するあや姉に目をやりながら言った。

「……うん。いいよ」

あかねにいつもの元気が無いのは、きっとまだ眠いから。
俺はそう思っていた。



いつもはピョコピョコという擬音が似合いそうな歩き方をするあかねだけど、なんだか今のあかねは足取りが重く、進まない。

こんなに朝が弱い子だったかな……?
とも思ったが、それほど深くは気に留めなかった。
それよりも俺の頭は、これからあかねへ言う言葉の選択に追われていた。




あかねを先に部屋に入れドアを閉める。

するとあかねは、俺に背を向けて俯いたまま肩を震わせ始めた。


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