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堕天使と殺人鬼
【二次創作 その他小説】

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堕天使と殺人鬼--第3話---2

 晴弥よりずっと前の席では、クラスのお調子者サッカー部所属の柴木一平(男子六番)、坊主がよく似合う野球部主将の曾木周流(男子七番)、身長が百八十もあるバスケ部エースの野川勇吉(男子十二番)、半ば幽霊部員と化している剣道部の日下望(男子十四番)の所謂体育会系男子グループの四人が、ひっそりと眠っている。日頃の練習が余程ハードなのか、相当疲れが溜まっているようだ――幽霊部員の望まで寝ている様子には、少しばかり苦笑してしまうが。
 中間派グループに所属している晴弥は基本的に男子全般と交友があり、彼らのグループとも比較的仲が良かった。その中でも特に日下望とは、学校以外でも付き合いがある。
 望は冗談(所謂アメリカンジョーク)が好きで――お調子者の一平のようにクラス全体を笑わせるのはあまり好んでいないようだが、人を笑わせるのが得意な生徒である。何より、数学や英語、理科以外の成績はお世辞にも良いとは言えなかったが、知識が恐ろしく幅広く、普通の中学三年生では知りえないことばかりを知っている。特に政治関連のことは聞けばなんでも返ってきた。望は、晴弥が今まで付き合ったことのないタイプの人間だった。
 時々人を見下したような、皮肉めいた冗談を言ったりもするが不思議と嫌味な感じはなく、むしろ親しい友人にしかそんな冗談を言わないためか、距離が縮まったような気持になったりする。とにかく、グループは違くとも晴弥は望と水準以上の関係を持っていることが密かに自慢だった。
 そこで晴弥は視線を望たちからそれより前、担任教師の遠山武紀とバスガイドが座っている最前列の方へ移した。座席が少し高めになっていて背もたれがいくらか低いその席は、二人の姿がしっかりと見える。教師暦20年のベテランで理解も深く生徒たちからの人気もそこそこ高い遠山先生は、若々しいバスガイドさんの隣でうたた寝をしているようだ。だらし無く前方で揺れている頭は、いつバスガイドさんの肩に寄り掛かってもおかしくなさそうだった。
 それの一つ後ろの席には、本来林道美月が所属しているグループで、女子学級委員長を勤める草野香澄(女子四番)をリーダーとするクラスで一番大きな女子主流派の面々が集まっている。身長はクラスの女子で一、二を争うほど低いが気が強く香澄の親友である麻生美奈子(女子一番)、誰にでも平等に接することのできる人当たりの良い金沢麻也(女子三番)、おさげがよく似合う気弱な感じの瀬峰久美子(女子七番)、成績優秀でいつも気難しい顔をしているちょっとクールな堤見響子(女子九番)、目が大きくて可愛らしいが大人しくてあまり目立たない根本薫(女子十二番)、面倒見がよく控えめな性格の保志優美(女子十五番)、女子大表お調子者でいつも賑やかな宗像笑子(女子十七番)が、新しいネタを披露する笑子を中心に、華やかに笑顔を零していた。
 金沢麻也と堤見響子は、晴弥と同じ母校の第二小学校出身だった。晴弥の記憶では小学生時代、麻也と響子には同じ学校の生徒という接点以外なかったのだが、それが現在一番親しい友人関係であるとはどこか不思議な感じがしないでもない。そう、二人は親友なのだ。気難しい響子には、癒しパワーのある麻也が一番相性の合う友人なのかもしれない。
 晴弥は同じグループの飛鳥愁と沼野遼の関係を思い出す。喧嘩っ早くキレやすい愁は、暖かく受け流ししてくれる遼と一番仲が良い。麻也と響子の関係も、それと同じようなものなのだろう。
 晴弥は思考を中断して視線を戻した。
 草野香澄たちのグループの後ろの席では、アニメ好きで有名な蓮見和彦(男子十三番)と、ゲーム好きの堀田肇行(男子十五番)が仲良く肩を並べていた。オタクコンビと呼ばれる和彦と肇行は、半ばクラスでは二人で浮いた形になっていたが、晴弥はオタクというのを特に気にしたことはなかった。このクラスの、大場冬文(男子二番)が仕切る男子不良グループ何人かには少々睨まれているようだが、むしろ晴弥は肇行とはゲームの話で多少気が合ったし、友人の一人として認識していた(アニメは見ないので、和彦とは全く話が合わなかったが)。
 二人は晴弥が見る限り、特に仲良く談笑している様子はなかった。静かなものだ。恐らく、二人共自分の趣味に没頭しているのだろう。


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