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 昨日の夢から一転清々(すがすが)しい朝をむかえた。多少まだ完全には覚醒はしていないから、考えもまとまらない。眠気を少し残したまま朝食を食べ、学校へと急ぐ。

昨日とほとんど変わらなかった。だが、晃人も同じ様な夢を見たという。

 昨日の夢は何だったんだろう。

起きてから大分時間たったから、考えもまとまってきた。

 (何処かで聞いた話だが)夢では、自分の願望や希望を表す場合とこれから起こるであろう出来事を表す場合の二通りあるという。前者だとしても、後者だとしてもおかしい。

親友の晃人を殺すという願望や希望は僕には無い――逆に晃人が僕を殺す願望や希望もないと思う――し、これから起こるとしても修学旅行には、SLに乗るという予定は全くない。

では、夢の中で何を伝えたいのか? 謎に包まれていた。だが、深く考えても答えが出るはずもない。だから、何も考えないことにする。

様々な考えを廻(めぐ)らせた昼休みもあっという間に終わっていた。午後からの授業も何事もなく過ぎ去っていった。家に帰ってからも特別なことは何も起きなかった。

問題はこれからだ、と自分に気合い入れ、寝る。だが、中々寝れなかった。徐々に深い闇へと落ちていくのであった。




誰も居ない。道路を走っている。誰も居ない道路を走っていた。建物はあちこちにそびえている。人の気配はまるでしない。そう、建物だけをそのままに僕以外のが消えてしまったように……。僕のきれそうな息だけが静かに響いていた。

息はきれ、もう限界だった。でも、何度も後ろを振り返り「早く逃げなければ!」という思いが過(よぎ)る。

何かが後ろからカツーン、カツーンと靴音を鳴らしやってくる。恐怖からなのか分からないが、身体からは血の気が一斉に引いていくのが感じた。意を決してバッと後ろを振り返ると、そこには一人の男――この段階では男か女かは、検討もつかないが、なぜかこの人は(追ってくる人は)男だという確信があった――がこちらに向かって歩いてくる。真っ黒なスーツを着て、女性のような端麗な顔つき、ボサボサ頭をしていた。

「どうですか? 思い出しましたか?」

思い出した? この男は何を言っているんだと思った。

「あんたは、一体何者なんだ?」

「そうですねぇ。あえて言うなれば、貴方を追ってきた人間ですよ」

後で知ったのだが実はこの男、昨日夢の中で声を掛けてきた人物の同一人物なのだ。

「貴方も私もそちらの世界に長く居られないんですよ。だから、貴方を追ってきたんです。こちらの世界に戻すために……」

「何を言ってるんだ?」

「これ以上語る必要はございません。貴方が本当に目を覚ますのを私は待っていますから」

「ちょ、ちょっと待て。一つだけ質問に答えろ!」

「いいですよ。何でしょうか?」

「何故、晃人に同じ夢を見せたんだ?」

「その件につきましては、私達には非がごさいませんので」

その男は少しずつ透明になり、間もなく周りの景観と同化した。と同時に景観が歪み、それが僕を飲み込んだ。


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