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「はあ、はあ。誰なんだ、あの男は」

既に着ていた服は汗で濡れていた。あの男の目的は詳しくは分からないが、簡単に言えば僕を連れ戻すことらしい。

 恐怖の二文字が身体を覆い始めた。身体が震える。だが、深く深呼吸して落ち着かせる。

忘れよう、この事は忘れよう、と言い聞かせた。もうこんな夢など見ないように……。




 だが、細(ささ)やかな願いに反して男は毎日のように夢に出てきた。何度も「思い出せ」と語り掛けてくる。これが一週間も続くと僕の身――身というよりは記憶――にも不可解な事が起き始めた。この僕『高内 疾風(たかうち はやて)』の記憶と何者か分からない少年の記憶が共存をし始めたのだ。

 二週間も続けば、僕の? 僕? ボク? ボく? ぼく? おレ? オレ・は? オレは? そうか、オレは…………………。
……………………。
………………。
……………。
…………。
………。
……。
…。

そこで『高内 疾風』としての記憶は終(つい)えた。



プシューと目の前に蚕型の機械が開く。同じような機械が横にも縦にもたくさんある。オレは今までいたのが、過去を見るための道具だ。そこから離れて、少し明るさを放っている扉へと近づく。

扉が開かれると、オレに光が降り注ぐ。

 眩しい、こんな太陽を浴びたのは何日振りだろう。

 外には、一人の男が立っていた。女性のような端麗な顔の持ち主で、男らしいボサボサ頭だった。

「ようやく、お戻りになりましたか。疾風 憐(はやて れん)様」

「おう、絃夢(げんむ)。オレは今まで何をしていたんだ?」

「夢を見ていたんですよ。長い長い夢を、ね」


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