Ordinary Diary U-2
「え〜っと・・・これを俺にどうしろと?」
「どうやったらこんな式が出るのか教えて欲しくって」
それを俺に聞くか!?
それこそお門違いってやつだろ?
「まぁ、正しい解き方教えるからさ」
考えうる最短ルートを推測しすぐさま実行に移す。
我ながらたいした演算能力だ。
「本当?やっぱり羽田君に聞いて良かった〜」
そう言って彼女はにこやかに微笑んだ。
いつもどおり彼女の顔を直視できないままノートに視線を落とす。
「ここはaとbの値を公式に当てはめて・・・」
俺の説明をひとしきり聞き終わった後、ノートとにらめっこを始めた彼女はとても幼く見えて、そんな姿を眺めているとなぜか自然に頬が緩んでしまっていた。
「そんなににやけてどうしたの?」
訝しげに尋ねる彼女の言葉にハッと我に還る。
「な、何でもないよ。それより俺の説明で分かった?」
「うん、バッチリ」
細くて白い指で俺にVサインを見せてきたが、ホントに分かってるんだろうか・・・
俺の疑るような視線に気付いたのか慌てて彼女は話題を変えた。
「そ、そういえば来週クラスマッチだよね。男子はサッカーだっけ?」
彼女の問い掛けに俺は眉をひそめる。
できれば触れたくなかった話題だ。
「あぁ」
嫌な話題になると、途端に不機嫌になる。
俺の悪い癖だ。
「試合出るの?」
「さぁ?どうだろうね」
軽くあしらっても、笑顔で彼女は続ける。
「もしかして運痴とか?勉強ばっかりやってるからしょうがないか」
ガタッ、といきなり大きな音を立てて立ち上がると、彼女は驚いた顔を見せる。
「別に関係ないだろ」
そう言い放つとカバンを持って教室を出る。
何も知らないくせに好き放題言いやがって
しとしとと降り続いていた雨は上がり、晴れ間が覗いていた。
家の前まで来ると聞き慣れた声が耳に入る。