きみのとなりへE-3
二人で仲良く歩いてると、前から来た男の人が
「沙癒!」
と呼んだ。沙癒ちゃんは「あ、大地さん!」と言って親しげに手を振った。
大地さんと呼ばれた男の人は、僕を見て
「カテキョの子?」
と言った。僕は頭がカッとなって、思わず睨んでしまった。
「違いますよ!彼は…友達です。」
それから沙癒ちゃんとそいつは二、三言話して別れた。
「ごめんね、一平君。なんか先輩が失礼なこと言っちゃって。」
「いや…」
うまく笑えなかった。なんか悔しかった。僕と沙癒ちゃんが二人で歩いてたら、家庭教師の先生と生徒に見えるなんて…。しかも、大学生と高校生だからあり得るんだ。それが余計悔しかった。
僕が黙っていると、沙癒ちゃんが口を開けた。
「今のはサークルの先輩なんだ!」
「…サークル?」
「同好会みたいなやつかな。私、バレーのサークルに入ってるんよ。」
ニコニコ笑って話してくれる沙癒ちゃん。
…もしかしてさっきのやつが好きなのかな。だからこんなに楽しそうなんかな…。
「一平君?」
ハッとして沙癒ちゃんの方を見ると、寂しそうに力無く笑ってた。
「わたしんち、そこだから。…じゃあね。」
「え?!あ……。」
沙癒ちゃんは手を振ってアパートに入っていった。
【つづく】