青いリボン-4
彼女は風邪か何かで休んでいるんだと信じたい。しかし思えば、飲食費や買い物のお金等もほとんど俺が払っていた。
俺は遊ばれたんだろうか。彼女にとって俺はただの暇潰しでしかなかったのだろうか。
彼女と会えなくなって5日、ゲーセンのけたたましい電飾にライトアップされたベンチで、俺はひとり泣いた。
情けない涙だった。
悔しさと情けなさと喪失感に打ちひしがれていた俺を照らし出していた光が、不意に何かに遮られた。
俺はみっともなく崩れた顔を上げる。
暗闇に慣れていた俺の目には黒いシルエットしか映らない。それから辛うじてわかるのは、スカート、おかっぱ頭。
目が慣れてくるとその人はメガネをかけていることもわかった。
完全にその子の姿が映し出される。りぼんと同じ制服。おどおどしたような窺うような顔。
正直もう全てがどうでもよくなっていた俺は只々その子の顔を見つめていた。
彼女はしばらくすると目の光が消え、だんだんと浮かない顔になっていった。そして小さく口を開いた。
「りぼんさんから伝言です。」
俺は目を見開き、彼女を凝視した。
彼女は暗く、且つ淡々と続けた。
「『今まで会えなくてごめん。今度の月曜日にいつものベンチで』……だそうです。」
彼女はそう言い終えると俯いたまま早足で逃げるように俺の前から去った。
それを見送る俺の頭の中には、魚の棘のように何か引っ掛かるものがあるように感じていた。
家に帰ると真っ先に部屋に向かう。そして、小学校時のアルバムを取り出す。
思い出の詰まった宝物。やはり、鍵はここに隠されていた。
あの子とりぼんの関係。
おかっぱ頭にメガネ。
青いリボン。
全ての謎が解けた瞬間、俺は笑った。そしてすぐに涙を流した。
彼女の苦しみを頭に描いて、泣いた。彼女の想いを感じて、嗚咽を洩らした。
月曜日━━
前日購入したある物をポケットに、俺はいつものベンチに向かった。
ポニーテールの女の子…りぼんはすでにベンチに座っていた。
これは初めてのことだった。
「お♪ 遅いぞ?」
いつもと変わらない笑顔は俺の気持ちを逆に落ち込ませた。
「あぁ…ごめん」
「…あれ? 怒んないの?なんで一週間も来なかったんだーーって。」
「公園、行こうか」
「え? うわっ、こ、こうちゃん?」
俺は彼女の手を引いて歩いた。公園は子ども達の笑い声で賑やかだった。