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強引グマイウェイ
【コメディ 恋愛小説】

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強引グマイウェイ-1

『お前、俺と付き合うことになったから』
報告のような告白に、思わず頷いてしまった私。
あの日から、二週間。
なんだかんだで、私は蒲原壮助の彼女のままでいる。
「手ぇ貸せ」
「なんで?」
「繋ぐんだよ!早く出せ!」
学校からの帰り道。
突然、彼はバカみたいにデカイ右手を差し出した。
もう、この怒鳴り声や強面には慣れつつある。
それに口調や表情はどうであれ、言っている内容は結構アホっぽいことにも気付いた。
呆れ気味な私の手を、引ったくる彼。
満足げな横顔が、遥か上に見える。
なんせ190センチもあるのだ。
態度につられて身長も大きくなってしまったのだろうか。
「緊張してるのか?手ぇ繋ぐの初めてなんだろ」
そんなくだらないことを考えていると、蒲原くんが意地悪な笑みを浮かべた。
「そんなわけないじゃん…」
冷めた調子で呟くと、彼の足が止まった。
「お、お前男と付き合ったこと…」
「あるけど?」
「ああ!?今すぐその過去消せや!ムナクソわりぃ!!」
「無理に決まって…」
「俺の言うことが聞けねぇのか!」
聞けねぇよ。
彼にペコペコしている友人たちが哀れに思えてくる。
「ま、まさか、接吻はまだだろうな?」
「接吻て…あるよ。今時、普通でしょ?」
両手で顔を挟まれる。
抵抗する間もなく、蒲原くんの悪人面が迫ってきた。
「ちょっと!?やめてよ!」
「うるせぇ!消毒してやるから唇よこせ!」
「離せ!変態!!」
壮絶な格闘を繰り広げる。
通行人たちの視線など関係ない。
こんな男とキスなんて…
「あんたとキスなんてしたくない!!」
私が叫ぶと、彼の身体は離れた。
ホッと一安心して制服の乱れを直していたが、彼がいやに静かなので首を傾げる。
「蒲原くん?」
「なんだよ。こんなに好きでいてやってんのに」
「べつに…頼んでない」
いつもと違う空気に躊躇しながらも、つい言い返してしまった。
「そうかよ。じゃあ、もう終わりだな」
彼は力無く呟き、背中を向けた。
本当に行っちゃう気?
追い掛けようとした、その時。
「とめろよ!!」
蒲原くんの怒鳴り声が響き渡る。
「は?」
「『は?』じゃねぇよ!俺がいなくなってもいいのか!」
まくし立てながら彼が戻ってくる。
バカ過ぎ…て、可愛い?
「よくない」
「…は?」
「『は?』じゃないよ」
目を点にしている彼の腕を引き、短いキスをする。
「あーあ。初めてのキスくらいロマンチックにしたかったのに」
「お前、初めてじゃ…」
「蒲原くんとは初めてだよ」
みるみる色づいてゆく、彼のほっぺ。
バカ過ぎ…て、面白い?
「蒲原くんは違う意味でも初めてでしょ」
「そ、そんなわけねぇし。キスなんてガンガン…」
「ええ?私、チャラい奴嫌い」
「う、嘘に決まってんだろ!俺様は硬派なんだよ!!初めてだよ、初めて!!」
あまりにも予想通りの反応。
「やっぱりね」
私は口の端を上げてみせる。
「お前…ハメやがったな!?」
「何のこと?」
「犯す!!ゼッテェ犯す!!」
そんなことを言いながら、私たちの初エッチはこれから一年も後になった。
彼が硬派というのは本当らしい。
私を好きというのも、本当らしい。


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