Cross Destiny
〜神竜の牙〜A-30
「しかたないわね、じゃあ米と野菜の炒めものにしましょう」
それでもギースの家族達は自分達の分を切り詰めてアルス達の分まで用意してくれた。
その後五人はギースの家族達と一緒にテーブルを囲む。
テーブルには米と野菜を炒めたものとコップに入った水が人数分並んでいる。
明るく食事をするギース達だったが、貧しいギースの家族達に迷惑を掛けていることでアルス達は後ろめたく、黙って食事をしていた。
さすがのファラも、料理は質素だがこの時ばかりは文句は言わなかった。
「どうしたどうした辛気臭え!家のことなら心配すんな!そろそろ収穫時期なんだからよ。」
「そうよ、久々のお客さんなんだから遠慮しないで。」
そしてその言葉を聞いてスプーンを置いた。
「あなた達はこういう暮らしをしていて国に腹が立ったりしない?」
そして再び問い掛けた。
「別に。」
ギースはあっけらかんと答える。
「どうして?こんな貧しい暮らしをさせられているのにあなた達はこの国の女王を恨んだりしないわけ?」
「恨むなんてとんでもない。ファラ様は素晴らしいお方じゃよ。
あのエルフェン様の娘なんじゃ。」
「そう、それにきっとファラ様はエルフェン様やエルディン様の代わりを勤めなくちゃいけないという重圧で一杯なんじゃ。それでもめげずに国のために頑張ってる。立派なお方じゃ」
ギースの父親と母親がそう語った。
"ガタッ"
ファラが突如席を立ち外に飛び出していった。
「何か気を悪くさせたのかな?」
ファラを心配するギースにルナは「心配いりません」とだけ言うとファラを追い掛けていった。
するとファラは村のはずれの木に向かって泣いていた。
「ファラ・・・様」
心配そうに声を掛けるルナ。
「・・・んでよ」
「え?」
「なんであの人達はあんなこと言うのよ!
あれだったら恨まれて文句の一つでも言われたほうがよっぽど救われるわよ!」
「・・・・・」
「当の本人は重圧に耐えきれずにとっくにめげているって言うのに!」
後ろを向いたまま震えた声のファラにルナは近付く。
「私は・・・今までずっと一人でした。
だから人を信じることさえ知らなかった。
でもアルスとフォルツに出会って初めて誰かを信じるということを知りました。」
そして優しい声で語り始めた。
「・・・」
ファラは背を向けたまま黙って聞く。
「そして温かい人がたくさんいることも・・・・あの家族のように。
私はそういう人達を守りたいと思うんです。
でも国を守るということがそういう人達を守ることに一番繋がるんじゃないでしょうか?
だからファラ様にはそれを忘れないで欲しいんです。」
翌朝。
村を出る五人をギース達は温かく送り出してくれた。
アルス達は礼を言い立ち去る。
「あれ?女王さんよ、腕のブレスレットどうした?」
ファラの腕に高価なブレスレットが付いて無いことにヴェイルが気付いた。
「ああ、きっとあの家に忘れてきたのよ」
少しだけ照れたように答えるファラ。
「ふふふ」
ルナはそれを見て微笑む。