投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

Cross Destiny
【ファンタジー その他小説】

Cross Destinyの最初へ Cross Destiny 59 Cross Destiny 61 Cross Destinyの最後へ

Cross Destiny
〜神竜の牙〜A
-29

「いつも真っ先に根を上げるフォルツさんにしては立派な台詞ですなあ」
ヴェイルも目を細めて皮肉を言った。
「うっ・・・・・わかったよ!わかった!!
ならヒッチハイクをするよ!それでいいでしょ女王様?」
「まあいいわ!」

「なるほどタクシー(乗客運搬用の馬車)の騎手を脅して俺達を運ばせようってか。」
「・・・それはただのカージャックだ!
違うよ、貨物運んでる馬車が通ったら頼み込んで乗せてもらうんだよ!」
ルアルの町は廃れてるだけあり、それを挟む道には中々馬車が通らない。
通ったとしてもそれは乗客運搬用の馬車ばかりで中々目的の馬車が通らなかった。
しかし半日程待つと丁度貨物運搬用の馬車が通り、交渉をすると、快く承諾してくれ、後ろの貨物と一緒に乗せてもらえることになった。
勿論都合よくシーラ城行きの筈は無かったがシーラ城の近くの村、ラトゥンの村に送ってくれることになった。

そして馬車に乗ってから更に半日、五人はラトゥンの村にたどり着く。

既に日が沈んでいたので五人はラトゥンの村で休んで、翌日シーラ城に向かうことにした。
日が沈んでいるので村の様子はそれほどわからなかったが、それでも貧しい村だということくらいはわかった。
しかし貧しそうな村とは言っても、畑に田んぼ、冊に鶏や豚を飼っていて、正に自給自足といった感じの村で、貧しい中でも立派に順応して生きているように思えた。
しかし当然そんな村に宿屋があるはずは無く、断固反対するファラを余所にアルス達は野宿をすることに決めた。
その時
「あんたら旅人か?」
村人の一人が話し掛けてきた。
「そうだ。」
「こんな辺鄙な村に来るなんて物好きな人たちだなあ。ここは宿屋もないから困ってたろ?」
「ああ」
「なら俺の家に来るといい。」
その男は泊まる宛の無いアルス達を自宅に快く招いてくれ、五人はその男の好意に甘えることにした。
「俺はギース、まあよろしくな。」
ギースと名乗るその男はアルス達を嬉しそうにもてなした。
そしてギースの家の中に入ると小さな男の子が三人、女の子が家の中から二人走ってきた。
「父ちゃん誰この人達?」
「お客さん?」
そしてギースの奥さんらしき女性とギースの父親らしき老人、母親らしき老人も顔を見せた。
「おう、紹介するよ。
あっちの爺さんが俺の親父で婆さんがお袋。
あいつが家内。
こいつらは右から順番に息子のラス、ラリィ、ゼス。娘のアンにエリーだ。」

ギースは家族を紹介してくれた。大家族のようだ。
そしてアルス達も自己紹介をした。(勿論ファラは偽名を使って)
また、ルアルの町の人も、この村の人達もファラを見ても誰も女王と気付かないあたり、シーラ王国の人々はファラの顔は見たことが無いようだ。
「ねえ、一つ聞いていいかしら」
不意にファラが真剣な表情でギースに問い掛けた。
「なんだ?」
「なぜ見ず知らずの私達を招いたりしたの?」
ファラは初めて会った自分達を快く招いてくれたギースを不思議に思っていた。
「うーん。なんでって言われても、あんたらが困ってそうだったからな。それに客が来ると子ども達が喜ぶしよ。」
「・・・・・」
それからギースは夕食もごちそうしてくれると言い、アルス達が待っているとギース達が何やら台所で慌ただしくしている。
「しまった!もう家には米しかねえや」
どうやら自給自足にも限界があり、保存してある野菜や肉は既に底がついているようだった。
その後僅かな野菜は見つかったものの、やはり食料は乏しいようだ。


Cross Destinyの最初へ Cross Destiny 59 Cross Destiny 61 Cross Destinyの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前