Cross Destiny
〜神竜の牙〜A-27
【五大大陸一、権力の小さいシーラ王国。星石を発掘できる地域は比較的まともな生活ができるが、それ以外の町や村では人々は仕事も殆どなく、非常に貧しい暮らしをしていた。】
「これがシーラの現実か」
アルスはそうつぶやいたがファラは大して気に止める様子も無く、辺りをキョロキョロと見回すと
「ちょっと何よこの町、洒落た店の一つも無いの?最低ね」
と言い放った。
それを聞いて四人がファラを睨むが、ファラはシラっとした様子で町に入っていった。
「疲れたから休むわよ」
そして喫茶店を見つけるとそこに入っていった。
「あんのアマー」
フォルツはファラが後を向いたのを見計い、左手を立てて拳を握る。
「おいキレるな。キレたら大金が水の泡だぞ」
「わかってるよ。
それに俺をキレさせたら大したもんですよ」
ファラは喫茶店の椅子にさっさと座ってしまった。
四人は渋々ファラが座ってる席のテーブルにつく。
すると女の店主が注文を取りに来た。
「いらっしゃいませ、ご注文は?」
「アップルティー!!」
愛想悪く頼むファラ。
「申し訳ございません。・・・・・そのようなものは」
「はあ?アップルティーが無い喫茶店なんてありえない!」
この貧しく廃れかけたルアルの町の喫茶店には客もそう訪れるはずもなく店のメニューは普通の紅茶とコーヒーに統一されていた。
ファラはしかたなく普通の紅茶を頼み、それを飲む。
「なあ、あんた本当に何も思わないのか?」
「何が?」
ファラは紅茶をすすりながらフォルツを不思議そうに見た。
「この町だよ!あんたこの国の女王だろ?あんたの国の人がこんな生活してるんだぞ!」
「別に。私がこんな生活してるわけじゃないもの」
「・・・・・それを本気で言ってるなら俺はあんたを許さない!」
すると不意にフォルツが真剣な表情になった。
「何よあんた!私に逆らうつもり!?」
その場に険悪な雰囲気が漂う。
「ああ すいません すいません。女王様!こいつも反省してるから。」
しかしヴェイルがそこに割って入る。
「でもヴェイル!」
「・・・報酬!」
ヴェイルが小さな声でフォルツに囁く。
「わかったよ」
それを聞いてフォルツは渋々退く。
「無礼を許すのもこれで最後だからね!」
「あ、それより女王様は何でこんな所にいるんですか?」
怒るファラを見てヴェイルが必死に話を反らした。
「さっきも言ったでしょ!退屈な城暮しにうんざりしただけ!
討伐隊の出動許可に、編成。
少ない国家予算の中で政治に経済。
おまけに輸出入も他の国の言いなりだし。」
それを聞いて、このワガママな女王もそれなりに大変なんだなと思う四人だった。
「父上も兄上も何でこんなクズみたいな国を私に残したのよ!」
【10年前シーラ王国は国王エルフェンによって治められていた。しかしエルフェンが病気で死ぬと、エルフェンの息子であるエルディンが父親に変わって国王に君臨した。エルディンは貧しい国の為、国民の為にあらゆる改革を行った。
その必死な姿勢は国民の信頼を大いに集めた。
しかし改革半ばでエルディンは父親と同じ病に倒れた。
そして議会はしかたなく国王の椅子にエルフェンの娘でありエルディンの妹であるファラを国王として座らせた。
しかしファラは兄の改革を引き継ぐことはしなかった。
そのためこの国の状況は以前より良くなることはなかく、そして国に対する不信感が広がってしまった。】
「さあ、そろそろ行こう。」
フォルツが店を出ることを促し、五人は店を出た。
そしてその日はもう遅いのでとりあえずルアルの町の宿に部屋を取って一泊することにした。
アルスとフォルツとヴェイル。ファラとルナの組み合わせで宿泊することになった。
ファラは最初、相部屋は嫌だとゴネていたが自分は手持ちがなかったので渋々納得した。