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Cross Destiny
【ファンタジー その他小説】

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Cross Destiny
〜神竜の牙〜A
-17

「あの子は俺達の娘じゃねえ。」

「え?」
「さっき言った、殺された輸送係の内の一人、
ヴィンという男の娘だ。」
「あの子は母親を早くに亡くして父親と二人暮しだったんだ。
優しい父親が大好きでな、仕事が休みの日はいつも一緒だった。」
それから棟梁は、身寄りの無いその子を引き取ったこと。
父親が死んだ日から、その子の顔から笑顔が消えたことを話した。

「なんで・・・なんでこんな小さな子供がこんな思いしなくちゃならないんだ!」
フォルツは怒りに震えた。

翌朝、アルスが目覚めるとルナの姿が無かった。
フォルツとヴェイルが寝ていて退屈だったので、アルスは散歩がてら外に出掛ける。
しばらく町中を歩いていると小さな切りかぶに座るルナと女の子の姿があった。
何やら話しているようだ。
恐らくその子を思ってのことだろう、
普段あまり感情を表に出さず、無表情なルナが微笑みながら話かけていた。
「じゃあレイラちゃんは猫が好きなのね?」
ルナは既に女の子の名を聞いた様で名前で呼んでいる。
「よう」
アルスが二人に話しかけた。
「アルス」
ルナとレイもアルスに気付いたようだ。
「邪魔して悪いな」
「いえ、そんなこと無いですよ」
「お前、レイって言うのか?」
ルナ達が座っている切りかぶと反対側の切りかぶに座りながらレイに話しかけるアルス。
レイは黙って頷く。
アルスはそれから何を話そうか少し戸惑うが一つ質問を思いついた。
「あの家のおじさんとおばさんは好きか?」
「うん、すごく優しい」
レイはその質問に小さな声で答えた。
「そうか」
そして突然レイはアルスを見ながら涙ぐむ。
「お願い、お父さんの仇を討って!」
そして涙を流しながら言った。
「レイ・・・・・ちゃん」
ルナもそれを聞いて悲しげな表情をする。
「お父さんを殺した人をやっつけて」
更に号泣しながら叫ぶレイをルナは抱きしめた。
それを見てアルスが立ち上がる。
「断る。」
そして冷たく言い放つ。
「そんな!」
それを聞いたルナがアルスに返した。
「お前の父親が、今の憎しみだらけのお前を見たら悲しむだろうな。

だが、表情を変えずに続けるアルス。
「・・・」
「仇がどうとか考える前に子どもは子どもらしく笑ってろ。
それがお前の父親が一番に望む事じゃないのか?」
「・・・」
「父親が大好きだったんだろ?
だったら気持ちを考えてやれ」
「・・・・・」
「お前の父親を殺した奴の事なら心配するな。
仕事上倒すことになるだろうな。
だからお前は下らないこと気にしてないで子どもらしくしてろ」
アルスの言葉でレイは更に「うわわん」
と泣き出した。
しかし今までのとは違い、それは確かに子どもらしい泣きかただった。


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