刃に心《第−1話・剣に誓った初恋〜前編》-5
「こ、こんなのが出るから危険なのだ…」
「な、なるほど…」
二人は引きつった声を出した。
目の前に現れた黒い野犬は牙を向きだしにし、威嚇する。四肢には力が漲り、何時でも飛び掛かれるであろう。
「く、来るな!」
楓が木刀を構え、野犬に向かい大声をあげる。
「ワンッ!」
だが、野犬は臆することなく楓に向けて飛び掛かった。
───バシッ!
突然、野球のボール程の石が野犬の足に当たる。さらに間髪入れずにもう一発。今度は額。
「キャウン…」
意外と可愛らしい声をあげて野犬が逃げていく。
「危なかったぁ…」
疾風は思わずへたりこんだ。手には先程の2発と同じくらいの石が握られていた。
「お前…か?」
「ああ…良かった…アレだけで逃げてくれて…」
疾風はゆるゆると立ち上がった。
「お前…なかなかすごい奴だな…見直したぞ」
楓がそう言うと、疾風は少し照れくさそうに頬を掻きながら笑った。
◆◇◆◇◆◇◆◇
───ブツッ。
「はい、此所まで!」
「ほっ…」
「何だ、その安堵の溜め息は?」
「そ、そんなもの吐いておらぬ!」
「じゃあ、シイタケ先輩、後編のテープを♪」
「こ、後編!?」
「今回は前編だ。タイトルにもあるだろ」
「なっ!?聞いておらぬぞ!」
「テープだって2つあっただろ!」
「では、後編でお会いましょう♪」
後編に続く…