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記憶のきみ
【青春 恋愛小説】

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記憶のきみ0-2

長かった式が終わり、新入生は自分のクラスへ向かう。
由貴は教室でクラスメイトの顔を確認していた。
「……」
どうやらあいつは違うクラスみたい。
あれ…?あたしはなんであいつを探しているのだろう。
ばっかみたい。

しかし、入学してから数日、気付けばいつも彼を探している自分がいた。

それから、友達を通して彼の名前を知った。


常葉瞬。


その名を聞くと、胸がドキドキした。
そのとき、これが恋なのだとわかった。
あたしは、彼が好きなのだ。

廊下ですれ違うたびにドキドキした。
彼を見つけると、必死になって目で追っていた。
時々、あたしはなにをやってるんだと思った。声をかければいいじゃない。
でも、あたしはそんなこともできない臆病者だった。
入学式のことを思い出すと、今でも顔から火が出るほど恥ずかしい。
こうなったらどうにかしてあっちから話しかけてこさせようと思い、いろいろと女を磨くことにした。
ヘアスタイルや化粧に気を配り、誰にでも愛想よく振る舞った。
けれど、寄ってくるのはどうでもいい男たちばかり。
あたしは彼にどうしても……




そうして気付けば三年生になった。
チャンスは今年で終わり。
しかし、その“チャンス”がやってきた。
「常葉瞬…」
新しいクラス名簿にその名はあった。
わたしは彼と同じクラスになったのだ。
チャンスだ。この機会を逃す手はない。
ほどなくして、彼が教室に入ってくる。
彼は出会った日より、背も高くなり、大人っぽくなっていた。
彼は席につき、一人でぼーっとしている。

今しかない。

あたしは心臓の高鳴りを抑えながら、彼の席へ直行した。
「………あの」
『なに?』
懐かしい。あたしを助けてくれたのはこの声だった。
「常葉…瞬くんだよね」
『……そうだけど』
「あたしのこと、覚えてる?」
ちょっと!!あたしは何を聞いているのだ。
彼は切れ長の目をじっとこちらに向けている。
心臓は依然バクバクだ。
『……きみ』
彼が重い口を開いた。
「………」
『誰?』
あちゃー。やっぱり、覚えてるわけない。
ヤバい、恥ずかしい。
あたしはなにを……
顔がみるみる赤くなっていく。
「い…いゃぁぁぁぁ!!」

バシッ…

やっちゃった。
一度ならず二度までも。
思わず閉じていた瞼を開く。
「………え」
彼はあたしの手を掴んでいた。
『……思い出した』
「………」
『入学式のとき、パニクってた女だ』
「う」
否定できない。
みるみるうちに顔が赤くなるのがわかる。


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