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堕天使と殺人鬼
【二次創作 その他小説】

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堕天使と殺人鬼--第1話---1

 あたしは、人間が嫌いだ。





オリジナル・バトル・ロワイアル

【試合開始直前】
堕天使と殺人鬼 --第1話--
〜喜びの堕天使篇〜





 あたしは世に言う八方美人らしい。人に嫌われるのが恐いが為に、みんなに好かれたいが為に『本当の自分』を晒け出すことができずにいる。『本当のあたし』は我侭で、自分勝手で、人を思いやる心なんか欠片もなくて、欲張りで、はっきりしなくて、後ろ向きの考えばかりで、酷く醜い。でもあたしが八方美人と言う名の仮面――悪口を言わないこと、人を嫌わないこと、常に笑顔でいること、他人を労わること、感謝の気持ちを絶対に忘れないこと――を、被れば誰ともなく人は、あたしに寄って来た。それらの仮面をあたしは物心ついた頃からずっと守って来た。
 特別難しいことではなかった。寧ろ、ずっとそうして来たあたしはいつからか、その仮面が本当のあたしだと信じて疑わなくなっていた。
 それが自惚れだと言うことに気がついたのは、この、クラスになってからだ。

 あたしは、クラスメイトが大嫌いだ。と言うよりも、憎い。憎たらしい。人を嫌わないようにと心がけていた反動からか、いつの間にか、自分でも気付かない内に嫌いを通り越して心底憎いと思うようになっていた。
 原因は、数回にわたる友人とのトラブルだった。全てのトラブルが、あたしにばかり非をなすり付けるから、あたしはクラスの女子のほぼ全員に省かれた。
 いや、しかし、それだけならまだ、良かった。あたしにとって、教室は絶望と言う名の地獄――まさにそれだった。あの男の存在が、あたしを恐怖や絶望に閉じ込めて逃げ出すことも敵わない。
 そんな状況の為か、食べ物の味も分からず、深く眠りにつくこともできずに、肉体的にも精神的にも疲労が耐えない日々が続く。終わりの見えない奈落の底へと、あたしは日に日に堕ちていった。
 一人になると、決まってクラスのこととあの男のことばかりが頭に過ぎり、興奮が治まらない。頭が困惑して錯乱してしまう。そんな時の解決法は、身体のどこかをカッターで切ることだった。流れる血とともに、胸の中のモヤモヤしたものが一緒になって流れて行くようだった。痛みが持続している間は、少なくとも、安らぎを感じていた。
 身体を切ることは異常だと自分でも思うし、切り傷を見てはそんな自分に嫌悪感さえ覚えるが、きっとそれをしなかったらあたしは一気に奥深くへと堕ちて行き、戻っては来れないところだったと思う。自らの命を絶っていたかもしれない。
 しかし逆にそれらの行動が、あたしは異常な人間だということを妙に実感させた。だからあたしをそう言う風に変えた、彼らがどうしようもなく憎くて、憎くて溜まらなかった。

 だからあたしは、チャンスがあれば彼らに復習しようと企んだ。頭の中で、その時彼らを殺す瞬間を何度も何度も想像した。
 しかし、それあくまで想像の出来事で、実際は、そんなことできるほどあたしの心は強くなかったし、チャンスもなかったのだが、それが今、現実になろうとしている。

 あたしは日記を書いている。日々の辛い出来事を細かく日記に刻んだ。
 これはあたしの分身。あたしの全てを書き表したこのノートは、あたしの想いそのもの。
 あたしが死んだ後も、これさえ残っていれば辛くない。心残りなんて、ない。
 このノートが消えた時、それがあたしの本当の意味での死んだ時となる。
 あたしの願いはただ二つだけ。それはこのノートがいつまでも残ること。そして――クラスメイトたちに『死』を。





【残り】--三十八名--


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