ケイと圭介の事情(リレー完全編集版)-36
因みに今回の2‐Aのバンドメンバーの編成はこうである。
ボーカル 香織&ケイ。
ギター 加奈子。
ベース 慎也。
キーボード 未歩。
ドラム 幸司。
元々、個性的なキャラクターが揃っているこの学園だがそれだけではなく多芸な人間も多いのだ。
特に加奈子は多芸な人間として学園でも有名であり、いろんな部活から声をかけられる程だった。
そして、今回のライブの選曲や演出等をメインは香織や幸司で取り仕切った形にはなっているが、実際には裏で彼女が全ての指揮を取っていたのである。
「ケイ、今日のライブが終わったら智香のところに行ってみない? あの子のクラスでお化け屋敷やってるんだって」
緊張感を感じさせない笑顔でケイの隣を歩いている香織が楽しそうに言った。
「そうね、このライブが無事に終わったらそうしましょう」
ケイがそう言い終えるのと同時に反対方向から藤崎美弥が率いる2‐Cの面々と出くわしたのだ。
「あら、朱鷺塚香織さん。随分と余裕でいらっしゃるのね」
美弥が挑発するような態度で話しかけると香織も同じ様な態度で言葉を返した。
「あ〜ら、それはもちろんですわ。なにせ今日のお相手は藤崎美弥さんなんですもの」
お互いに笑い合う二人だったが目は笑っていなかったのだ。
香織と美弥の周りの空気が凍てついた様に緊迫してきたのである。
そして美弥の悪意ある一言に反応した香織によって二人の態度は激変した。
「美弥っ! 大体あんたねぇどうしていつもいつもいっつも、あたしに絡んでくるのよ!」
「別にあなたなんかに絡みたいとは微塵も思ってないわよ!」
「じゃあ、どーして何かある毎にちょっかい出すの」
「それは私があなたのことが気に入らないからよっ」
「それは奇遇ね、あたしはじめて美弥と意見が一致したみたいだわ」
「全くもって不本意だけどその点だけは香織と同意見よ」
いがみ合う二人が周囲の目も気にしないで互いにマシンガントークを炸裂させていた。
「いいこと香織! 今日こそは徹底的に叩きのめしてぐぅの音も出ないようにしてあげるわっ!!」
「臨むところよっ! それこそ返り討ちにしてやるから後で吠え面かくなよっ」
二人は互いに宣戦布告を告げると背を向け合いそれぞれのクラスメイト達のところへ歩いていった。
しかし、美弥は一度立ち止まるとそのままの状態でケイに話しかけた。
「ケイさん、初めて会うあなたにこういうことを言うのもナンセンスだとわかっていますが敢えて言わせてもらいます。私はあなたのことも香織と同じくらい気に入らないんです」
それだけを言うと美弥は再び歩き出していた。
「なんなのあいつ。あたしだけじゃなくケイにまで敵意を剥き出しにしちゃって」
美弥の背中を見送るケイに不機嫌そうな香織が呟くのだった。
「私、彼女に何かしたかしら?」
「ケイは何もしてないでしょ。あれは自分よりケイの方が目立ってるから単にやっかんでるだけよ」
「そうなのかな…」
香織の意見に何か少し違う様な気がしたケイだったのだが、これからのライブに意識を向ける為これ以上は美弥のことを考えるのを止めようとしたのだった。
そんなことを話しながらケイ達が指定されたライブステージの裏に集まるとそこには既に実行委員長の安奈がいた。
また自分達と同じステージで演奏をする美弥達2‐Cの面々もそこに集っていたのだ。
やはり人が多ければ多少はざわつくものである。
そんな中でケイ達の様にステージに上がる人は目を惹くものがあった。