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ケイと圭介の事情(リレー完全編集版)
【コメディ 恋愛小説】

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ケイと圭介の事情(リレー完全編集版)-33

「どうしたの? そんな顔をして。あたし、何か特別なことを言ったかな」
「…ううん、香織ちゃんの言葉が嬉しかっただけ。香織ちゃんの優しい言葉がね……」
ケイが言葉を言い終える直前に香織はケイを抱きしめた。
「いやぁ、ケイは可愛いなぁ」
「か、香織ちゃん!?」
香織の突然の抱き着きにケイは驚き思わず声が裏返りそうになると、香織はいたずらっ子のような笑顔を見せ「更衣室でのお返しだよ」と言うとケイの頭を優しく撫で始めるのだった。
しばらく目を閉じ香織にされるがままになっていたケイだが気分も落ち着いたらしく「香織ちゃん、ありがとう」と笑顔で伝えるのだった。
「好きでしたことだから気にしないで」
笑いながら答える香織に、今回の自分の不手際に少し心を痛めたケイを微笑みながら香織は更に言葉を続ける。
「ケイって以外と一人で悩みを抱え込むタイプ? でも、それってあんまり良くないと思うからあたしが力になれることがあれば少しだけでも話してほしいな、あたしはケイの友達のつもりだからさっ」
この時の香織の会話と表情はケイにとってとても印象的だった。
 
その後、香織がケイを途中まで送ると言いだしたのだが先程の件を考えるとケイは断りきれなかった。
「奈津ねぇと智香ちゃんの家で待ち合わせしてるからここでいいよ」
御屋敷町と普通の住宅街への分かれ道でケイが笑顔で香織に礼を言うと香織は不思議そうな顔でケイを見つめていた。
「香織ちゃん?」
「…あ、ごめん。いや、ケイって奈津子さんの呼び方が圭介と同じなんだなぁってね……」
香織は苦笑しながら痛いところを突いてきた。
ケイは一瞬凍りついた。
迂闊だったとこの瞬間、自分を責めた。
なにせ今まではケイと圭介両方に接点を持っている人物はケイの秘密を知っている家族と奈津子の仕事での一部関係者のみだけだったから油断したのだ。
しかし、自分を責めるのも一瞬だけで、すぐに適当な理由を考えそれを言葉にした。
「まあ、奈津ねぇと同様に圭介とも付き合いが長くてね。お陰で余計な口グセがいくつか移っちゃってるのよねぇ…」
ケイは苦しい言い訳だなぁと思いながらも香織が信じてくれる様に祈りながら苦笑いをするのだった。
「ふ〜ん、そうなんだぁ。たまに智香の家に遊びに行くと相沢と奈津子さんが騒いでて時たま相沢の『奈津ねぇ』って大声が聞こえてたから私も何となく覚えてたんだよね」
香織がその時の様子を思い出したのか楽しそうに笑い出すのを見てケイは内心とても恥ずかしくなって愛想笑いをしたのだった。
「あっと、こんなところで立ち話してるのもなんだよね。ケイ、今日はゆっくり休んで明日よろしくね」
そう言うと香織は笑顔で手を振りながら御屋敷町の方へ続く道を走って行くのだった。
ケイも香織を笑顔で見送りため息をつくと我が家に向けて歩き出した。
 
「ただいまー」
ケイの姿で相沢家の玄関を通るのも既に慣れきっていた圭介だった。
だが、やはりこの姿を家族に見せることにはまだ抵抗がある為、早く部屋に戻って着替えようとした時リビングから母と智香の声が聞こえてきた。
「智香ちゃん、カメラのバッテリーは大丈夫かしら?」
「お母さん、それよりメモリーカードのチェックしておかないと」
「あらあらそうだったわ。すっかり忘れてたわ」
あまりに不穏な会話が聞こえてきたので、圭介は思わずリビングに飛び込んだ。
「母さん、智香、やめてくれ! そんなもん用意してどうする気だよっ!!」
「あら、おかえり。今日はケイちゃんの恰好で学校に行ったの?」
ケイの姿で怒鳴る圭介の言葉をさらっと流した母は圭介のことなど気にもしない様子で手にしていたデジカメのシャッターを切るのだった。


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