投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

ケイと圭介の事情(リレー完全編集版)
【コメディ 恋愛小説】

ケイと圭介の事情(リレー完全編集版)の最初へ ケイと圭介の事情(リレー完全編集版) 33 ケイと圭介の事情(リレー完全編集版) 35 ケイと圭介の事情(リレー完全編集版)の最後へ

ケイと圭介の事情(リレー完全編集版)-34

「てか、来る気満々かよ! 来なくていいって言ってるのに」
「え〜っ! 智香ちゃん、圭介くんがつれないこと言うよぉ。母さんもい〜き〜た〜い〜!」
母さんはソファーに座りながら足をバタバタさるのを見て俺はため息をついた。
「あんたは子供ですかっ」
「子供じゃないも〜ん、母親だも〜ん」
そんな二人のやり取りを見ていた智香は呆れた様に笑うしかなかった。
「いーもん、圭介くんが嫌がっても絶対に行くんだから。ち・な・み・に、これなぁんだ?」
母さんはニヤリと笑いながらポケットからチケットらしきものを取り出し俺の前に突き出した。
圭介の目の前でピラピラと舞うそれは学園祭の入場チケットだった。
「母さん! どこからそれをって、聞くまでもないのか…」
圭介は大きくため息をつくと気まずそうにしている智香をちろっと見た。
「お兄ちゃんごめんね。断りきれなくって…」
智香の性格を考えればそんなことはわかりきっていたのだが、母さんも母娘なだけに知ってて頼んだに違いない。
「はぁ…まあ、いいさ。智香の性格を考えれば当然の成り行きなんだし諦めるよ……」
そう言うと圭介は智香の頭を撫でるのだった。
その光景は兄と妹のコミュニケーションというより姉と妹のそれにしか見えなかった。
「俺、もう疲れたから風呂に入って寝るよ…」
そう言う圭介に母は「ご飯食べないの?」と聞いたが、疲労がピークに達していた圭介は「食欲がないからいいや」と答えるとリビングを後にして自分の部屋に戻った。
部屋に戻ってから風呂に入り、ベッドに横になってから圭介はその後の記憶を覚えていなかった。
それだけ眠りが深かったのだ。
そしてとうとう日付は学園祭の当日になった。
 
学園祭当日、ケイの姿のままで学園に来た圭介と付き添いの奈津子を校門で出迎えたのは学園祭実行委員長の安奈だった。
彼女は二人に今日のスケジュールについての説明すると、ステージの近くある視聴覚準備室を控室として用意しておりそこに二人を通した。
「では、今日のステージ楽しみにしてますね」
そう言うと安奈は飛びっきりの笑顔で控え室を後にしたのだった。

「ふ〜ん、部屋はそれなりに準備されてるって訳ね。じゃあ、メイクを始めるわよ、ケイ」
気合の入った奈津子がケイを鏡の前に座らせると持ってきていたメイク道具を広げケイにメイクを施していくのだった。
「……んー、こんな感じかな。こらっ、動くな! もうちょっとジッとしてなさい」
「そんなこと言っても…」
奈津子は居心地悪そうに鏡の前に座るケイを窘めるとメイクの仕上に取り掛かった。
「おはようございまーす! 奈津子さん、今日の衣装を持ってきました」
元気よく控え室に入ってきたのはライブの衣装を手に持った香織だった。
衣装を見たケイは再びげんなりするのだったが、それも今更かと思うと香織に「ありがとう」と礼を言い笑顔を見せた。
香織から衣装を受け取った奈津子はニヤニヤしながら「香織ちゃん、ケイの生着替え見る?」ととんでもないことを言い出したが、香織は顔を朱くしながら慌てて遠慮した。
「親しき仲にも礼儀ありって言うか、あたしまだ女としての自信を失くしたくないですから。それに、私も着替えがあるし…」
そう言うと急いで控え室を後にする香織だった。
「香織ちゃん初々しくて可愛いわねぇ。ケイ、あんたの彼女にどうよ? あ、圭介にじゃないからね」
外に聞こえない様にケイの耳元で囁きながら笑う奈津子に対しケイは顔を真っ赤にしながら俯いた。
その時ケイは昨日の香織の仕種や姿を思い出していたのだった。
いつもと違う香織の可愛らしい一面。
そして、女の子だと嫌でも意識させられた身体の柔らかさ。
ケイと圭介の両方の姿の時に垣間見た香織の知られざる部分であった。
そんなケイの顔を黙って見ていた奈津子は何か思い当たったらしく、ただ穏やかな表情を見せたのだった。


ケイと圭介の事情(リレー完全編集版)の最初へ ケイと圭介の事情(リレー完全編集版) 33 ケイと圭介の事情(リレー完全編集版) 35 ケイと圭介の事情(リレー完全編集版)の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前