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ケイと圭介の事情(リレー完全編集版)
【コメディ 恋愛小説】

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ケイと圭介の事情(リレー完全編集版)-22

その頃、2‐Cの教室では竜二のケガの情報を聞いた藤崎美弥が面白そうに笑っていた。
「2‐Aの連中をどうやって邪魔しようか考えてたけど自滅してくれるなんてホントありがたいクラスだわね」
美弥の言葉は極端ではあったが、勝負が懸かってる今では2‐Cの意見としては確かに東谷のケガはありがたいものであった。
そんなクラスの総意ではあったが、やはりどんな場合でも穏健派というのは存在する。
『榎本千晶』もどちらかといえば穏健派の人間だった。
彼女の場合、今回の件についてあまり手放しで喜べないのは竜二が絡んでいることがその要因だった。
しかし、普段から大人しい千晶はそのことを言えずに一人で困った顔をしていた。
 
そんなことがあってから時間は過ぎ放課後になっていた。
千晶は竜二の怪我のことを聞いてからすっかり落ち込んだ雰囲気を身に纏ってしまっており、とぼとぼと重い足取りで廊下を歩いていると向こうから竜二が圭介や幸司達と一緒に歩いてきた。
千晶は竜二のことが心配だったが、圭介達が一緒だったのでそのまま通り過ぎようとした時に竜二から声をかけられビクッと反応してしまったのだった。
「榎本ぉ、声かけただけでそんなにビビるなよ。これじゃあ俺が悪人みてーじゃんよ」
笑いながら千晶の肩を包帯をしてる右手で叩く竜二を千晶は心配そうに見つめる。
「ん? これか? こんなの大した怪我じゃねーよ。保健の先生が大げさにやっただけさ」
千晶の表情から大体のことを察した竜二は右手を振りながら明るく振舞うのだった。
そして、笑っている竜二を幸司が後ろからチョークスリーパーをしかけるとニヤニヤした笑いで文句を言ってきた。
「おいっ! 今日は誰のせいで俺らのクラスは騒然となったのかなあ? 竜二くぅーん」
「そっ、そのことについては謝ったじゃねーか! てか、放せバカッ!! くるし…」
竜二は息を詰まらせると幸司の腕をパンパン叩いてタップし、幸司は「つまらんなぁ」と言いながら竜二を解放した。
「幸司、竜二は怪我してるんだからあまり無茶するなよ。竜二、大丈夫か?」
千晶の前で咳き込んでる竜二を圭介が背中を擦って声をかけると竜二は「だ、大丈夫大丈夫」と答えた。
そしてこの遣り取りを千晶は驚きを隠せない表情で見つめながら固まってしまっていた。
「ところでこの可愛いメガネっ娘は誰だね竜二くん」
幸司は顔をニヤつかせながら竜二の肩に手を置くとそれはそれは嬉しそうに訊ねたのだった。
「ああ、中学の頃からの知り合いで榎本千晶ってんだよ」
竜二は幸司の手を邪魔そうに払うと男友達でも紹介するかのように千晶を紹介し、彼女はそれに併せて「初めまして」と挨拶をしたのだった。
「あ、俺は中嶋幸司ってんだ。よろしくね、千晶ちゃん。ところで千晶ちゃんって何組なの?」
嬉しそうに千晶に話しかける幸司とは対照的に千晶の方は急におどおどしだした。
「わ、私は2‐Cです…」
「2‐C!? ああ、なんてこったい。これじゃあ俺と千晶ちゃんはまるでロミオとジュリエット状態じゃないか」
一人身悶える幸司を見て怯えだす千晶を見るに見かねて圭介は後ろから幸司を遠慮なく蹴っ飛ばした。
「いい加減にしろこのボケッ! どこまで恥を露出すれば気が済むんだよ。榎本さんドン引きどころか怯えちまってるじゃねーか」
圭介と竜二は冷めた視線で廊下に倒れてる幸司を見下ろしたのだった。


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