刃に心《第１２話・サイレントトランスファー〜無口な転校生》-4
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「…何やってんの？」
翌朝、靴箱近くの柱の裏に彼方がいた。正確には柱の裏に身を潜めていた。バレバレだが…
「ほぅ…これが、世の中の婦女子を苦しめておるというストーカーか。疾風、斬っても良いか？」
「まあ、勘弁してあげて…」
かなり物騒な会話にも彼方は反応しない。何やら入口を見つめ、人を待っているようだ。
「で、何をやってんの？」
「ふっふっふっ…俺は考えたのだよ。会話が成立しない刃梛枷ちゃんとコミュニケーションをとる方法を♪」
「どんな方法？」
「ふっふっふっ…簡単なことなのだよワトソン君♪彼女は恥ずかしがり屋♪だからこそ、古風な手で攻めてみるべきなのだ。つまり、ラヴレター♪」
コイツ、昨日の会話見てたのか？アレはどう見ても恥ずかしがり屋とかいう問題じゃないだろ。
疾風が内心でそう思っていると、靴箱に向かって目的の人物が歩いてくる。
「…キタ───！」
小さく奇声を上げる彼方。疾風と楓もその様子を見守ることに。
刃梛枷は静かに自分の靴箱を開いた。
そして………何事も無いように上履きを取りだし、靴を靴箱に収納した。
「…アレ？」
刃梛枷が教室に向かった後、彼方が刃梛枷の靴箱を開けた。そこには一通のラヴレターが靴に踏まれていた。
見られることも、読まれることも、棄てられることも、破られることも無く、興味さえも示してもらえない男の気持ち…
彼方は硬直した。
「うわぁ…」
「これは…」
そのルール無用の残虐ファイトに二人は絶句した。
「ふっ…ふふ…ふはははははは！」
突如として笑い出す彼方。疾風と楓がひぃっと短く悲鳴を上げた。
「相手にとって不足無し…この俺を本気にさせちまったようだな…」
ぶつぶつと壊れたような笑顔で呟く。
「いいだろう！俺は負けない！残虐超人がなんだ！悪魔超人がなんだ！完璧超人がなんだぁ！心に愛がなければスーパーヒーローじゃないのさぁ！！！」