詩を風にのせて 〜第1話 始まり〜-2
剣を構える。
「大丈夫かっ!」
ゾンビと戦っている村の者に話しかける。
「おお、ユキか。ユキがいてくれると心強いが、これだけのゾンビに襲われたら、もうだめだ」
「何言ってるんだ!諦めるなよ!諦めたら何もかも終わりだ」
「切っても切っても埒があかない。それに復活するんだ。」
「それでも―」
村の者はユキの言葉を遮って言った。
「もうこの村は終わりだ。いいか、よく聞け、ユキ。お前ら若いもんには私らの分まで生きてほしい。私らが全力で食い止めるから、ユキ、お前はレオとサクラを連れて逃げるんだ!」
「そんなこと…!」
「この村で生きてて幸せだった。悔いは…お前らが生きてくれればない!わかるな、ユキ?さぁ、早く行くんだ!」
村の者はユキを突き飛ばした。
ユキは村の者の強い意志を感じ取ったのか、急いでレオとサクラを連れて村を後にした。
川がそよそよと流れている。決して大きな川ではなかったが大人が不注意で一度足をとられたら流されてしまう程だった。
「はぁはぁ…ここまでくればとりあえず大丈夫だろ」
レオを言った。
「でもどうして急に突然こんなことが」
サクラは震える声でぼそりと言う。
「わからない。…!レオ、後ろ!」
ユキはレオの後ろに急に現れたゾンビに気付いて叫んだ。
レオは後ろを見て、逃げようとしたが、ゾンビに切り付けられてしまった。
声にならない悲鳴を上げ、川に落ち、流されていく。
「きゃぁぁ!」
サクラはその場に座り込む。
ユキは剣を構え、ゾンビを切りにかかる。
ゾンビのほうが遅いため、ユキが襲われることはなかったが、すぐに再生してしまうためになかなか倒せないでいた。
「ユキ、ゾンビがいっぱい…」
サクラが出ない声をふり絞ってユキに伝える。
ユキは驚愕した。たった一体でこれほどてこずっているのに前方に見えるゾンビの群れなど倒しきれるわけがない。
「ユ、ユキ…」
サクラの消えそうな声が聞こえた。
サクラのほうを振り向くと、どこからか現れたゾンビによって首を締め付けられ悶えているサクラの姿があった。
すぐさまサクラを助けようと思った刹那、ユキは今まで自分と戦っていたゾンビに殴られた。
途絶えていく意識の中でユキは最後に、サクラが動かなくなり川に捨てられたのを見た。
そしてあとを追うようにユキも川に落ちた。
ユキが目を開けると、その先には大きな木が1本あった。
起き上がってみる。体に痛みは感じなかった。
依然と流れている川があり、近くにレオとサクラが倒れていた。
そしてレオの上には綺麗に丸く緑色に光るものがあった。
「な、なんだ…?」
思わずユキは声に出してしまった。
「あら、気付いたの?」
レオのいるほうから声が聞こえた。
「へっ…。おばけ?!」
「失礼ね!おばけじゃないわよ」
緑色に光るものはユキに近付いた。
緑色に光るものの中心を見ると、どうやらそこには妖精がいるようだった。
「よ、妖精…?」
「そうよ、私はエイミ・リーシェル」
エイミ・リーシェルと名乗る妖精は、清楚な感じで無地の白いワンピースを着ていた。いかにも妖精らしい。足より長いかもしれない金髪を二つに結わえている。どことなくキツそうな顔をしている。