俺らの明日THIRD-2
「いや、せっかく買ってきてくれたんだし、効くことは効きそうだったから飲んだんだよ。」
「おいおい、マジかよ。」
「どうなったんだ?」
「上も下も完全覚醒。」
「ぶはっ!!」
「だっはっは。」
「下ネタかよ〜。」
「笑い事じゃねーよ。マジで由々しき事態だったんだから。」
「最高だよ、お前。」
「そいつは災難だったな。」
「もう勉強どころじゃなくてさ。大変だったんだから。」
「結局どうなったんだ?」
「効果が切れたんが三時ぐらいでさ、そっから勉強しようにもできなくて結局寝ちまった。」
「じゃあテストは?」
「たぶん追試。」
「ぶぁっはっは。」
「もう死ねよ、お前。」
「ああ、親父殺して俺も死ぬよ。」
「待て待て、親父さんは殺すな。」
「最高だよ、お前の親父。」
「ワンクリック詐欺事件話してやれよ、賢治。」
「なんだなんだ、教えてくれよ。」
「親父さ、ワンクリック詐欺のサイトに引っかかったんだよ。」
「やばいやばい、その時点で既に笑えるって。」
「びっくりしたよ。パソコンの前で震えてんだから。」
「だっはっは。」
「しかもいきなり電話回線パソコンから引っこ抜くし。あん時はかなりあせったよ。」
「芸人並みの面白さだな。」
「金払ったのか?」
「家にそんな金あるかよ。しばらく親父パソコンに近寄らなかったけど、ニュースで事件見てまた使いだしたよ。」
「全然懲りてねーじゃん。」
「もう最悪だ、あの親父は。」
「いや〜、なんかテストできなかったこととか吹っ飛んだな。」
「ああ。」
「じゃあカラオケでも行きますか!」
「お、いいね〜。」
「じゃあ行くべ。」
「あ〜、喉痛ぇ。」
「でかい声出しすぎなんだよ。」
「それに高い歌を歌いすぎなんだよ。」
「自分の限界を知れ。」
「おっ、かっこいい。」
「でもカラオケの歌で使われてもな。」
「いいじゃん、別に。」
「あ〜、腹減った〜。」
「何か食べに行こうぜ〜。」
「俺あんま金ねーよ。」
「俺も。」
「安くて美味くて量の多い店ないかな。」
「贅沢すぎるよ。」
「家帰れよ。全ての条件満たしてるよ。」
「俺のおかん料理下手なんだよ。」
「今そんなことカミングアウトされてもなぁ。どう反応していいか困るよ。」
「俺の母さんさ、よく歌を歌うんだよ。」
「どうした?いきなり。」
「愚痴なんだけどさ、聞いてくれよ。」
「で、歌う母親がどうしたんだ?」
「なんか日本語変じゃない?」
「そうか?」
「聞いてくれよ。」
「すまん。」
「で、音痴なのか?」
「ああ。ど下手。」
「それで勘弁してほしいのか。」
「それもあるんだけど、それだけじゃないんだよ。」
「なんだ?」
「歌う曲が問題なんだ。」
「何歌うんだ?」
「題名しらねーんだけど、『母さんが〜夜なべ〜をして』を歌うんだよ。」
「…お前何やらかしたんだよ。」
「全然見に覚えがない。」
「実の親に歌われるとか最悪じゃん。」
「俺もなぜかわからんが土下座する勢いで止めてくれって言ったよ。」
「そりゃそうだよ。あの歌にはどう足掻いても息子は勝てねぇって。」
「だな。」