お手紙A-2
「シケたわ〜…。奈津実頑張るって言ってたじゃん」 「もう頑張りました…」
「…あのさぁ」
久美が蔑むような目で見る。 「みかけとか体型とか、大事だけど、奈津実が松田さんを好きなんだからそれだけで松田さんも奈津実も幸せ。それじゃダメなの?」…よく意味が分からない。「松田さんは奈津実からの精一杯の想いを今日受け取ることができて、奈津実は奈津実で精一杯伝えることができたんだよ。人から好きになってもらうことってウチ的にはマジ嬉しいんだけど。ウチが男ならね。」 「チビで不細工でも?」
「まぁ重度のチビブスなら、もっと努力しろって言ってやるよ。でも奈津実は軽度だから大丈夫だ。」
「…。」 励ましになってない。(つまり、自信を持たねばならないということだ。)何となく自己解釈するけど、そんなこと言われたってやっぱり自信持てない。
ブーッ ブーッ ブーッ
携帯のバイブ音が鳴る。
「松田から愛のメールか?」呼び捨てですか久美さん…
送信元 松田君
『俺は明日もいつもの電車に乗って学校行くょ。奈津実ちゃんもいつもの車両乗って行くの?』
松田君は10分おきくらいに顔文字も同じ機種なのに絵文字もないメールをくれる。だから、私も可愛い顔文字とかを使わないメールを返してしまう。
『そうです。
「突然ですが明日の朝少しお話しませんか。」
画面を覗き込んで久美が呟いた。
「…無理。」「無理とか言うな。」「無理に決まってんじゃん!」
思わず叫んでしまった私。「嫌だよ…こんな不細工な奴と松田君だって話したくないよ、きっと。」
周りの女の子達が振り返ったので声を落としたけど口調が震える。 …そうだ、私は彼と話せない。どうしようもなく怖い。もし私を間近に見た松田君が私に幻滅したら……全く自分に自信が無い私にはマイナスの思考回路しかなかった。
「だからなんでいちいち決め付けんの?奈津実は話したこともない人に手紙を渡せたんだよ?地味なあんたが。すごい勇気じゃん。しかも松田君、あんたの方見て微笑んだんだよ?咄嗟に手紙渡されて、演技でそんなことできないでしょ?」『ありがとう』
照れ臭そうにはにかんでた松田君。確かに、あの笑顔は、嘘じゃない…
「…松田君、逃げたりしないかな」
「松田はネズミじゃないんだ、きっと逃げない。」
……よし
『そうです。突然迷惑なこと頼むかもしれませんけど、明日の朝暇ですか?よかったら一緒にお話しませんか?』
送信… 送信完了
……
…!!
ブーッ ブーッ
(来た…!) 返信が、早い。
送信元 松田君
『ごめん!明日はバレーの朝練あってちょっと無理…』(え…避けられた…?)
『今日の放課後なら部活5時で終わるから空いてるけど、そっちは?』
(え…?これって、もしかして…)
「今日会えるってこと…!?」
胸が高鳴る私。
今まで朝の電車の中でしか会えなかった松田君と、初めて違う時間帯に、二人で会える…。