きみのとなりへ-1
彼女の笑顔は僕の心をいつもあったかくするんだ
『きみのとなりへ』
僕の名前は一平。18歳。ミュージシャン。と言ってもまだプロではない。毎週水曜日と金曜日に路上ライブをしてるアマチュアのミュージシャン。
僕の相方は誠二。二人でギター持って二人で歌う。それが僕らのスタイル。
今日は待ちに待った水曜日ライブ!金曜日のライブも楽しいけど、水曜日は格別なんだ。だって彼女が来てくれるから…
毎週水曜日、欠かさず見に来てくれる彼女。名前も年もなんにも知らない。知ってるのは、あのあったかい笑顔だけ。
僕は彼女の笑顔を楽しみに、いつもの場所に行く。
いた!
彼女だ。
心があったかくなる。
「みんな、今日も見に来てくれてありがとう!めいっぱい楽しんでってね。」
そして僕らは歌い出す。彼女の笑顔を感じながら…
僕にもう少し勇気があれば話しかけるんだけど…話しかけれないまま、また今日も帰ってくる。
「一平、お前今好きな子いるでしょ。」
突然誠二が言ってきた。
「な…なんでっ」
「そんな顔してる。どの子?」
「んなっ…内緒だよ…」
誠二はクスクス笑って、バレバレやけど〜って言ってた。バレバレなんだ…うわぁ〜はずっっ!
そんな話をして誠二と分かれた。僕は何となくコンビニに入った。
マンガを立ち読みして、お菓子の新商品を物色して、結局お茶とガムを持ってレジに行った。
レジでお金を払おうとすると
「あれ?」
「あ…」
彼女だ!うそ!ここでバイトしてたんだ!!
「こんばんは」
「あ…ゎ…こんばんは」
僕は緊張のあまりどもってしまった。恥ずかしい…
「…あの…いつも見に来てくれてありがとう。」
彼女は少し驚いた顔をして、でもすぐ笑顔になって
「ううん。毎週楽しみにしてるんだよ!」
と言ってくれた。ヤバい…可愛い。
彼女の名札を見ると“重松沙癒”と書いてあった。綺麗な名前だ。