高崎龍之介の悩み 〜初恋〜-9
それを聞いて呆然としている暇など、なかった。
携帯が、龍之介専用のメロディを流し始める。
「龍之介!?」
美弥は携帯を取り出し、電話に出た。
「龍之介っ……!」
『この前はどうも』
甘く蕩けた声が、美弥の背筋を凍り付かせる。
「あなたッ……!」
『龍之介君の身柄、預からせて貰ったわよ』
「あなた、お兄さんが目的なんでしょう!?どうして龍之介をさらうの!!」
立花恵美の声が、ころころと笑った。
『竜彦にはとうに未練なんてないわ』
「えっ……」
『龍之介君の恋人なら、とっくに味わってるでしょう?あの凄いおち〇ち〇』
「っ……」
『竜彦も、あれ程じゃあなかったのよね……』
その言葉が、美弥の第六感を刺激した。
「龍之介が……目的……な、の……?」
その呟きに、恵美は答えない。
「答が知りたかったら、クイーンズホテルのスイートルームにいらっしゃい……来るまでには、龍之介君に私の体を思い出させてあげるから」
龍之介の携帯を切り、恵美は蕩けた笑みを浮かべて振り向いた。
ダブルサイズのベッドの上へ、手足を拘束されたほかに猿轡まで噛まされた龍之介が転がっている。
龍之介の腕っ節は確かに強かったが、恵美が連れて来た場慣れしている屈強なボディガード六人掛かりの猛攻を凌ぎ切れる程、格闘に長けている訳ではなかった。
愛用の眼鏡は暴れている最中に壊れてしまったため、女性では母親と美弥にしか見せた事のない眼鏡なしの顔を曝している。
近眼なので、少し離れた場所にいる恵美の事は、ぼやけた色の固まりとしか認識出来ていなかった。
「携帯、借りたわよ」
ぼやけた色の固まりが近付いて来て、恵美になる。
――今は嫌悪感しか催さない、初恋の女(ひと)。
「場所を教えてあげたけど……来れるかしらね?」
恵美は手を動かし、ズボンのファスナーを引き下ろそうとした。
「!!」
手足が不自由な龍之介は、身をよじって抵抗する。
「あん……私にもう一度、この凄い×××を味わわせてちょうだい」
卑猥な言葉を吐きながら、恵美は龍之介の足を押さえ付けた。
歯で噛んで、ファスナーを下ろす。
現れた格子縞のトランクスに包まれている肉棒は、全く反応していなかった。
「ふふ……昔は触る前に出しちゃうくらい、興奮してくれていたのにね」
クイーンズホテル。
シングルの部屋でも一泊ン万円はするという、この街随一の高級ホテルだ。
そこのスイートを取る恵美の財力は、一体どれ程のものなのだろう。
龍之介をさらわれたという事実に頭がパニクっていてそんな疑問が浮かぶ余地のない美弥は、クイーンズホテルのフロントにいた。
「すいません、こちらのスイートルームに立花恵美という女性が泊まっているはずなんですが!?」
息せき切って駆け込んで来た美弥は、フロントにいた従業員の男性に早口で尋ねる。
「立花様でございますか?あ……伝言を預かっております」
あらかじめ美弥の人相が伝わっていたらしく、男性は封をされた手紙を差し出した。
美弥は引ったくるように受け取り、封を切って手紙を読む。
『スイートルーム
1003にいます
早くいらっしゃい
立花恵美』
「っの女……!」
喉の奥で唸った美弥は、エレベーターに駆け込んだ。
たっぷりと唾液を溜め込んだ口腔内で、龍之介の肉棒が愛撫される。
それと同時に掌が、優しく玉袋を揉んでいた。
その刺激に龍之介はただ気持ち悪さしか感じず、全身の肌を粟立たせている。
むろん刺激され続けている肉棒が、勃つはずもなかった。
「っ……なかなかしぶといわね……」
しばらくして顎が疲れて来た恵美は、フェラチオを止める。
「どうあっても、勃って貰うわよ」
そう言って、恵美はきゅっとすぼまった龍之介の肛門へ指を這わせた。
「っ……!何をッ!?」
猿轡を外されていた龍之介は、抗議の声を上げる。
つぷんっ!
「ぅぐっ!」
龍之介は、異質な感覚にのけ反った。
「……見っけ」
恵美はにっこり微笑む。
「男の、魔法のボタン」
「めぐっ……!!?」
龍之介は、強制的に勃たされた。