高崎龍之介の悩み 〜初恋〜-6
その日の夜。
「……はぁ!?」
龍之介は、危うく口に含んでいた飲み物を吹き出してしまう所だった。
明日はお休みという事でお泊まりに来た美弥が、潤んだ目で自分を見ながら『笹沢さんと話さないでよぉ』と言った時は、一体何事かと思ったのだが。
それが今日の体育の授業中の事を嫉妬しているのだと理解した龍之介は、嬉しくなって美弥をきつく抱き締めた。
「大丈夫だよ。僕は、美弥以外目に入らないから」
「……ほんと?」
拗ねた目付きが、何とも言えず愛しい。
「うん、本当」
龍之介は、そう請け負う。
――話している事は、真実だ。
実は龍之介、恵美に犯されて以来年の上下に係わらず女性が苦手なのである。
普段お喋りする程度ならば支障は全くないが、一歩踏み込んだお付き合いというものは最近まで、そういう考えが脳裏をかすめるだけでもその場で即座に卒倒しそうになる程のタブーだった。
それが何故だか美弥だけは好きになってしまったのだから、自分で自分が分からない。
しかしそれ故に龍之介は、美弥以外の女性と付き合うなんて考えた事もない。
「……信じられない?」
美弥の目を覗き込み、龍之介は尋ねた。
「…………信じる」
美弥の言葉に、龍之介は微笑む。
「もっと信じさせてあげる」
ちゅっ……
キスが訪れ、美弥は龍之介にしがみついた。
「僕がキスだけでこんなになっちゃうの、美弥しかいないよ」
龍之介は、美弥の手を股間へ導く。
穿いているズボンが、きつそうに張り詰めていた。
「うん……」
美弥は導かれた手でズボンのファスナーを下ろし、トランクスの中へ忍び込ませて龍之介へ直に触れる。
繋がる度に失神する程に気持ち良くしてくれる、龍之介の一番敏感な場所。
「あ〜……さ、触られると、ちょっと……」
快感のためか僅かに腰を引く龍之介の態度に美弥は笑みを漏らし、ズボンの中から龍之介を開放した。
身を屈め、愛しい人のまだ柔らかい肉棒へかぶりつく。
「たくさん気持ち良くしてあげる」
「いやこれは信じて貰うためのパフォーマンスで、今夜は襲う気はなっ……っわ!!」
ぐんっ、と龍之介の腰が跳ね上がった。
美弥の舌がくねくねと蠢き、亀頭を優しく刺激し始める。
「ん……んぷ……」
美弥は丁寧に舐めながら様子を確かめるべく目線を上にやるのだが、その仕草が妙に色っぽくて龍之介を煽った。
「ぷ……はあ……」
たっぷりと唾液を絡め、美弥は肉棒に奉仕する。
「ん、ふむ……」
襲う気はなかったと言う龍之介が、美弥に襲われているという奇妙な構図になった。
「……淫乱とか、思う?」
唇を離し、ふと美弥は尋ねる。
性に関して積極的である事を、気にしているらしい。
目を閉じ、歯を食いしばって湧き出る快感に耐えていた龍之介は、その問いにうっすらと目を開いた。
「……どうして?」
大きく息を吐き、龍之介は問い返す。
「だって……勝手にこんな真似してる」
龍之介は少し笑い、美弥の頬を撫でた。
「僕が美弥に気持ち良くなって欲しいからって色々するのは、淫乱だと思う?」
ぶんぶんと、美弥は首を横に振る。
龍之介は、笑みを強くした。
「同じ事だよ」
単純明快で疑問を挟む余地のない解答に、美弥は微笑む。
「まぁ、最初は興味本位だったんだろうけど……今は、僕に気持ち良くなって欲しいからしてるんでしょ?」
「……うん」
「そういう気遣いを淫乱と感じる思考回路の持ち主がいたら、僕はお目にかかってみたいね」
龍之介は美弥の脇腹に手をやり、上半身を持ち上げた。
服を全て脱がし、つんと上を向いた形のいい乳房を目で楽しむ。
「り……龍之介?」
見られている恥ずかしさに、美弥は体をよじった。
体の動きに合わせて、乳房がぷるぷると揺れ動く。
「たまんないなあ……」
呟いた龍之介は体をずらし、美弥の下へ潜り込んだ。
ちゅっ
「ぅんっ」
乳首にキスされ、美弥は体をぴくりと震わせる。
「あっ……!ふぅん、ん、ふ、うううっ……」
龍之介は舌先と指先に神経を集中し、技巧を凝らした。
「んうんっ、あ、うあぁん……!」
美弥の全身が、跳ね踊る。
逃げ出したいのかもっと愛撫して欲しいのか、判別がしづらい。
「くっ……!」
乳房への愛撫を続けながら、龍之介は呻いた。
全裸の美弥が体を揺らす度に、屹立した龍之介の先端と美弥の柔らかな繊毛が擦れ合って、何ともじれったい快感がもたらされるのである。