―ほら、笑え―-1
僕のお父さんはヒーローだ。と言っても、世の中の悪い奴らを倒したり、世界を救うとかそんなんじゃない。
僕にとってヒーローなんだ。
『うっ………えぐっ……。』
なんで泣いてるのかって?友達と知らない所を探険しに行った帰り道、迷ってしまった。見知らぬ土地。……僕は独りになるとすごく怖くなってしまう。家への道もわからず…たださ迷っていた…。
『…う……誰か知ってる人いないかなぁ…。』
当然ここに知ってる人は一人もいない。これからずっと迷ったままで独りっきり……なんて考えるとさらに怖くなってしまう…。
『ねぇねぇ…ボク〜。』
知らないお兄さんが話し掛けてきた。
『………?』
僕は涙を拭きながらお兄さんの方を見た。
『どうしたの〜?迷っちゃったの??』
『は、…はい…。』
『じゃあお兄さんが家まで連れていってあげるよ!』
あ、お兄さんはきっといい人なのかな……でもお父さんがいつも……知らない人にはついていくなって言ってるし……どーしよう…。
『ま、ついてきなって!』
『え、…?』
『いいから来いってんだよ!!』
やっぱり怖い人だ!
『う、うわあぁ〜。』
『泣くなよ!うっせぇな。オラさっさと……』
?…怖い人が突然黙った。なんだろう?怖い人の目線の先には猛ダッシュでこっちへかけてくる人が……。
あ、
お父さんだ!
『うらぁあ!!てめぇオレの可愛い息子になにしてんだ!!!!あ、誘拐か!?誘拐なのかオイ!!』
お父さんが怖い人の首を掴んで問い詰めてる…。怖い人ちょっと可哀相…。
『どーなんだ!?ゆ・う・か・い・で・す・か!!?』
『いやオレは親切に…。』
『嘘つけコンニャロウ!!さっき息子に怒鳴ってただろう!しかも泣かせやがって!!』
『いやいやいやいや。きっとこう…蜃気楼かなんかで…』
『違うよお父さん!この人が僕をいじめたんだ!』
お父さんと怖い人(今はもうなんか弱ってるけど…)が一瞬目を合わせた。
次の瞬間、怖い人の悲鳴と人を殴る音がした。うわあお父さんすごいなぁ……。
『く、くそ!覚えてやがれ!!』
『はいはーい。さよならー。』
一目散に逃げる怖い人(?)
僕は緊張が解けて…またさっきの事で泣いてしまった。