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淫魔戦記 未緒&直人
【ファンタジー 官能小説】

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淫魔戦記 未緒&直人 3-11

「……!」
「分かったか?」
くっくっと、喉の奥で伊織は笑った。
「でも、まさか、そんな……!?」
ありえない。
信じられない。
でもこれは、真実。
「俺が、お前の父親なんだ」
「−−−−ッ!!?」
信じたくない真実に、未緒は声にならない悲鳴を上げた。
「後はベッドの上で可愛がりながら教えてやるよ」
「できるんだったら、ね!」
あさっての方向から聞こえてきた声に、伊織は視線をそちらに向けた。
未緒もそちらに視線を走らせる。
「綾女さん!」
そこにいたのは神保綾女ともう一人、知らない男性だった。
自分達を取り巻くあまりにも異様な雰囲気に、二人揃って飛び出してきたようである。
「ボディガードか。ご苦労な事だ」
二人の頬が微妙に赤らんでいるのを見て取って、伊織はせせら笑う。
「今は夜……俺達『闇に棲む者(ミディアン)』が人間に出し抜かれる事など、まずないのだぞ?」
「やってみなけりゃ分からないわよっ!凪!」
「……クリムゾン」
二人は己の所有する使い魔を呼び出し、伊織に襲いかかった!
「四人か……くくっ」
伊織は腕を一振りする。
その瞬間、未緒には見えた。
濃厚なフェロモンが周囲に拡散し、自分のみならず護衛の二人をも包み込むのを。
そして……バーテンダーがカウンターを乗り越え、伊織を守るように立ち塞がったのも。
「ぐっ……!!?」
「ぅく……!!」
呻き声を上げ、二人は床にへたり込む。
精神集中が途切れたせいで、使い魔はもといた場所へ送還されてしまった。
「さっきわずかながらもフェロモンを嗅いだからなあ……効いただろう?」
伊織が笑う。
「今はお前らに構う暇はない。ようやく俺の望みが叶おうとしているんだからな……後は任せるぞ」
バーテンダーにそう声をかけ、伊織は抵抗できない未緒を抱き上げてラウンジを出ていった……。


ザーッ……キュッ
頭から冷たいシャワーを浴びた直人はバスローブを羽織り、タオルで濡れ髪を拭いた。
直人は未緒の事が心配で急遽ホテルの部屋を取り、そこに居座っている。
−体に付いた水滴をバスローブにあらかた吸わせると、直人は服を着込んだ。
いつ、何があってもいいように。
心配でしょうがない心をごまかすためにテレビなどつけ、時間を潰す。
どれほど時間が経っただろうか。
ピンポーン……
ドアに取り付けられたインターホンの音が、陣取っている部屋に響いた。
「はい?」
応対に出た直人は、驚いて体を硬直させる。
「こんばんは」
バーテンダーらしき恰好をした男がむやみやたらと大きな毛布の塊を二つ、両肩に担いで立っていた。
「やーしんどかった!あ、お届けものです」
男はにこにこ笑いながらずかずかと部屋に入り込み、毛布の塊をベッドの上に置く。
「中身は、人間二名」
「はぁ!?」
直人が反射的に問い返すより早く、毛布の中から出てきた全裸の男女が絡み合い始める。
それは、今日未緒を護衛しているはずの二人だった。
「い、一体……まさか!?」
「そう。我が主に返り討ちにされてしまった哀れな二人組だ」
バーテンダーはそう言うと、床にくずおれる。
その体から、黒い靄が立ち上ってきた。
靄はバーテンダーの体を借り、最初からあの場所にいたのだ。
(最も、もう主とは呼べんがな……その二人はあやつのフェロモンに当てられて、前後の見境なく発情している。近付けば、巻き込まれるぞ)
靄の主。
フェロモン。
返り討ちにあった護衛。
未緒。
……二人きり。
「……待て」
突飛な考えが頭の中に浮かび、直人は思わず額に手を当てる。
「ちょっと待て……それじゃ……」
(お前の考えている事は、正しいぞ。藤谷未緒の父親は、モデルの伊織だ)
「なっ……じゃあ!?」
(未緒は、既に誘拐されている)


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