全てを超越『3』-4
「そうね。やっぱり私のような可愛げもなくて、あなたの事になるとすぐに見境をなくして……」
あ、自覚あるんだ。
「こんな女……嫌いよね」
「……馬鹿たれ」
「え?」
「別にお前より春子を想ってるからメットを買わない訳じゃない。メットはバイクに乗る時の命綱だからな。自分で自分に合った物を買わなきゃならん」
小さすぎるのは被ってられんし、デカすぎるのは危ない。
「いつも万事抜かりなく進めるお前の事だ。そのメットもお前にぴったりなんだろ?」
しかも3万はするやつ。一回も使ってないのに、変えるなんて勿体無い。
「わかったわ……。あなたの言うとおりにする」
なんとか納得したみたいだな。
しかし、なぁんか罪悪感が……。
「……明日はバイクで来るから、後ろ…乗るか?」
朝霧がこっちを向いた。
「……えぇ」
その後は俺たちは無言だった。
朝霧と別れたバス停まで。
見ようによっては…カップルに見えなくもなかったかもしれない。
とりあえず、俺の心の中に、朝霧が入ってきた事は確かだった。
大きくなるかは、今後次第だな。