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淫魔戦記 未緒&直人
【ファンタジー 官能小説】

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淫魔戦記 未緒&直人 外伝 〜胎動〜-1

ある日曜日の午後。
繁華街のファーストフードに、未緒と友達の姿があった。
「ふっふっふ。未緒、あんた何か報告する事がなあい?」
チーズバーガーをかじっていた未緒は、首をかしげた。
「何を?」
「例えば男ができたとか。ひょっとして男ができたとか。ほんとは男ができたとか」
「ああ……」
友達が何を言おうとしているか理解した未緒は、コクリとうなずいた。
「それは、できた」
「どぉしてそおいう大事な事を隠し立てするのよぅっ!?」
すかさず入ったツッコミに、未緒は苦笑いで答える。
「隠し立てしたんじゃないの。ただ、相手が相手だから言いづらかっただけ」
友達は唇を尖らせた。
「相手、誰よ?」
ストレートな質問に、未緒は再び苦笑いを浮かべた。
「特徴を言うから、当ててみて」
友達はうなずいた。
「そうね……年は、私より四つ下」
「……ずいぶん若いわね」
「かなりの美少年で」
「あら、ラッキーじゃない」
「父親がこの街の有力者」
「……ちょっと待って」
「名前が神保……」
「ちょっと待てえいっ!」
友達は、さすがに大声を上げた。
「あ、あんた……あの、神保直人をゲットしたの!?」
周囲の視線を気にしたのか慌てて声をひそめつつ、友達は早口で質問する。
未緒はうなずいた。
「どおやって!?」
「どうって……」
未緒は返答に詰まる。
−この街で神保家の名を知らない者がいるとしたら、おそらくは引越してきたばかりの新参者だろう。
それくらい、神保家の名は知れ渡っている。
その当主ともなれば、獲得競争の倍率は相当なものになるのは必至。
その事を頭に叩き込んでいる友達は、未緒がどうやって直人の心を射止めたか、熱心に知りたがった。
「教えて減るもんでもないでしょ!」
「あのね……」
未緒は肩をすくめた。
「まあ、馴れ初めくらいなら……」
「それでもいいっ!」
仕方がないので、未緒は馴れ初めを聞かせる事にした。
「一年前、私しばらく学校を休んだじゃない?」
「うん」
「あの頃に出会ったんだけど……」
そこまで言って、未緒は詰まった。
本当の馴れ初めを聞かせたら、十中八九正気を疑われるのがオチだろう。
しょうがないので適当に話をでっちあげながら、未緒は本当の馴れ初めを思い出していた……。


あの頃は自分も母も何が何だか訳が分からず、様々な病院を訪れて治療を受け、たらい回しされた揚句に神保家へたどりついたのだった。


神保家の治療室に、一組の男女の姿があった。
一人は、少年。
白装束に身を包み、沈痛な面持ちで目の前の布団に転がされた者を眺めている。
もう一人は、少女。
シャツとショートパンツのほかには何も身につけておらず、手足はロープで拘束されている上に口へ猿轡を噛まされている。
どこをどう見ても、尋常とは思えない状況である。
布団の上に転がされた少女は、少年を誘うように体をくねらせた。
大きめのシャツがはだけ、たっぷりした乳房が現れる。
少女の瞳がぞっとするほどの色気を籠めて、少年を見つめた。
「……」
少年が、ため息をつく。
「……榊」
何の反応も見せずに、少年ははだけたシャツを元に戻した。
「まだ聞き出せないか」
少年の関心を買おうと悩ましく体をくねらせる少女。
その動きが、不意にピタリと止まった。
「む……ううむっ」
今までとは違う反応。
かすかな期待をしながら、少年は猿轡を外した。
「あっ……ありっ……ありが、とう……」
開口一番の礼に、少年が微笑んだ。
「君……藤谷未緒、だよね?」
少女−藤谷未緒は、こくんとうなずいた。
観察を始めてからようやくまともになった少女の様子に、少年は笑みを深くする。
少女の瞳には理性の光が宿り、自分の置かれた状況を理解しているのか、異常な状態にも取り乱すそぶりすら見せない。
「僕は神保直人。名前だけは、知ってるかな?」
未緒は、再びうなずいた。
「わ、たし……」
未緒がもぞもぞと体を動かす。
「ああ、動かなくていいよ」
直人は慌てて動きを押し止めた。
正気に戻ったとはいえ、体を動かされると背筋がゾクリとするような色気が発散される。
こんな状態が続けば商売を忘れて、目の前のみずみずしい肉体に襲いかかってしまいそうだった。


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