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The-cherry-blossom
【ファンタジー その他小説】

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The-cherry-blossom-front.1-1

迫害をするように俺は彼女を愛し続けた

その愛は苦痛のように映っただろう。

その愛は虐待のように映っただろう。

それでも俺はそれが愛だと信じて疑わなかった
第一段   15歳


彼女と出会ったのは、俺が中学三年生のときだっ
た。

季節は冬。

受験戦争という不毛な戦いにクラスメートたちが、身を投じ、そしてその戦いがクライマックスを迎えようとしている時期に彼女と俺は出会ったのだった。

(ちなみに俺は地元の公立高校に推薦で入学することが既に決まっていた。一般入試などおつむの足りない愚凡共が行うことだ。
何が楽しくて、若い貴重な時間を受験勉強などという無駄な事に使うというのだ。)


出会ったと俺は言ったがその表現はいささか不適切なものであるかもしれない。
出会ったというより、俺と彼女が始めて接触を持った時期というべきだっただろう。

俺は極力無駄な人付き合いを避けている。
なぜなら人間は嫌いだからだ。
よって自分が人間であることも許せない。人間が自動車を運転している事も許せない。人間が今この地球でのうのうと数を増やしている事実に、俺はとても憤慨している。
だから俺が死ぬその日まで、自分にとって明らかにプラスになる者としか接触をしないと心に決めて俺はこの15年間を生きてきた。いや正確には違うのか。まぁここで述べるほどのことではあるまい。


人間と関わりたくないから

よって彼女に言われるまでは彼女がクラスメートだということも知らなかったし、むしろ知らなかったとしても、これからの人生になにも支障は無かっただろう。とこのころの俺は思っていた。
   
15歳のある冬の朝、彼女が俺に話しかけて来た。
「ねぇ 滝川くん。滝川樹(たきがわいつき)君」

俺を呼ぶ声に振り向くと、見知らぬ少女が右手の人差し指を、自らの頬に当てながら廊下に立っていた。
緑色の名札をつけていることから同学年の生徒なのだろう。
染めているのかはわからないが、栗色の色素の薄い髪が印象的な女だった。
その女は自らの頬に人差し指を添え、小首を傾げていた。
何だか知らんが腹が立った。
「なにか用か?」
素っ気無くそう答える。
全く知らない女に声を掛けられ、名前を呼ばれた。
それだけで、と人は思うかもしれないが、俺はそれだけのこと腸が煮えたぎった。
こういう人種は嫌いなのだ。
まぁ俺はこういった人種に限らず人間すべてに憎悪しているが・・。
すると俺の態度が癪に障ったのか、
「え〜なにか用かだって?そんな反応されたらウチ困るわ〜」
と、素っ頓狂な声を廊下に響かせる。もちろん人差し指を添えるのも忘れずに。
そんな大声を出すようなことでもないだろう、と思ったが、もしかしたらコイツは俺が知らないだけで、これがデフォルトの声なのかもしれない。
だとしたらなんて迷惑な奴なんだ。俺にとって迷惑な奴は死ねばいい。
俺の内心の呪いの言葉を窺い知れるはずもない女に俺は声を掛ける。


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