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The-cherry-blossom
【ファンタジー その他小説】

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The-cherry-blossom-front.1-2

「なにか用かと聞いているんだが・・・。」
明らかに憤怒の念を隠さずに。
すると女は、何を言っているのかわからない
と言った調子で、
「だって滝川君、今日日直やろ?ウチも日直やねん」
と言う。
意味がわからん。
それがどうした?そんな事を聞いたわけではない。
しかしそのときひとつの疑問が浮かんだ。


なぜ、初めて会ったはずのこの女は、俺の名前を知っているのだ?

俺はその疑問を目の前の女にぶつけてみる事にした。

「なんで俺の名前を知ってるんだ?」
その言葉を聞いた女は一瞬きょとんした表情を浮かべた後に、笑いながら言った。

「だってウチと滝川君同じクラスやん」



「は?」


その後そいつから詳しく話を聞いて俺の口からでた第一声がコレだ。
間の抜けた俺の声はさぞかし廊下に響いたことだろう。
「じゃあなにか?俺とお前は同じクラスで」
「うんうん」
「今日の俺のクラスの日直はお前と俺で」
「うむうむ」
「つまりを言えば俺とお前は、今日一日、一緒に日直の仕事をしなければならないと・・・そういうことか?」
「うん、まさにそのとおりやね!」
あの鬱陶しいポーズ、頬に人差し指。小首を傾げる仕草。
「断る」
「がーーん」
俺は即答した。女は卒倒した。
「こ・・・断るってなんなん?日直の仕事断る!なんて言う人初めて見たわ、聞いたわ。ショックやわ〜。うわ〜著しくウチの心傷ついてるわぁ・・・。慰謝料・・・慰謝料や!慰謝料はらいぃ、30円や!!」
いやいや著しく傷ついたと言っといてお前の心30円分しか傷ついてないのかよ。いや、それともこいつにとっては高額の慰謝料なのだろうのか?
そんなことを考えながら女の姿を見る。

なぜかそのとき俺は寝不足というわけでもないのに、女の姿がひどく朧げに見えた。

「お前、名前はなんて言うんだ?」
俺の口からそんな言葉がこぼれていた。
「うん?」
女は一度うなった後に名前を告げた。

「蔓滝(つるたき)うちわって名前よ。わすれんといてな」


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