想いの行方U-7
「心〜急にどうしたの?」
「………だって…」
「何?」
「…口下手だから」
たったそれだけの答えに麻衣は「あぁ、なるほどねェ」と笑った。
何だか、麻衣がだんだん速水に似てきているのは気のせいかな。
「私も頑張ろーっと♪」
そう言いながら麻衣はレジへ向かった。
その後ろ姿を眺めながら私は悩んでいた。
どんな感じで渡そう…。
何を言おう…。
一晩中考えたけど、そんなことを考えてる自分に寒気がした。
―――――
「うわっ、何だその数!!」
「どうしてもって言うから1人受け取ったら、次から次へと…」
バレンタイン当日、朝から疲れきった様子で矢田が教室に入って来た。
すでに紙袋1つ分のチョコを手に持っている矢田を見てクラスの男たちが騒ぐ。
「モテる奴はいいよなー」
「うるせっ」
「西野さんからもらえれば十分だろ!あの西野さんだぞ?!羨ましいんだよ!」
丸聞こえな会話に微妙な顔をしていると「あの人数に待ち伏せされてたら断れないよな」とすかさず速水がフォローを入れた。
だけど、そんな速水の手にも矢田と同じくらいの数のチョコがあった。
「速水くん…もうあんなにもらってる」
隣で不安そうな顔をする麻衣。
前までは「大丈夫だって」と適当に励ましていたけど、今の私には麻衣の気持ちがよく分かった。
だから、頼りなさそうに笑いかけてあげることしかできなかったんだ。
「心〜」
私の心境を知るよしもなく、矢田はのんきに声をかけてきた。