桜ひとひら-2
「綺麗だ。まるで朝露を浴びた桜みたいだ」
その様子に興奮した声を上げた主人が、一気に入ってきた。
ズジュジュッ…
(はぁぁん…っ)
一突きで絶頂に達してしまいそうな程に気持ちいい。
さっきの主人の唾液とゼリーが、腰を打ち付ける度にピチャピチャと音を奏でた。
(もっと…もっと…あぁっイイッ)
「気持ちいい?声出していいんだよ?」
更に激しくピストンを繰り返す…ゼリーの中に入っていたフルーツがプチプチと潰れる感触がする。
わざと私の感じやすいスポットを擦られ、いつもなら私は主人の腰にしがみつき、いやらしい声をあげ続けていただろう。…そう、いつもなら。
「愛してる…っ」
もっと早くに聞きたかった。言葉にしなくても分かるなんて、言葉にする程には私を愛してない言い訳だと思っていた。
だから貴方を疑った。
探偵を雇い、貴方を調べた。貴方に愛人が居ると知った。
私は傷付き、半狂乱になって…
「愛してるって言ってくれよ!いつもみたいに…っ」
切なそうな主人の声に、胸がつまる。
(愛してる。)
言えたら楽なのに…
「許してくれよっもう…っ」
(あぁっ…っ…んっ…)
耳たぶを強く噛まれ、快感はより強く体に広がった。
挿入しながら噛まれるのが好きな事、ちゃんと覚えていてくれたの?
「愛してるのはお前だから…だからもう許して…」
ポツポツと、瞼や頬に落ちてくる暖かい水滴。
そう、これは主人の涙…
半狂乱になった私に、主人は土下座した。
馬鹿な事をした。と…
許してくれるなら何でもするから。と…
探偵が周りから聞いた話では、確かに愛人とは遊びだったようだ。
けれど、傷付いた私は主人を許せなかった。
泣きながら、その場にあった農薬を一気に飲み干した。
瞼に落ちた涙が頬を伝って流れて、まるで私が泣いてるみたいに見えるかな?
貴方を許せず馬鹿な事をした私の、後悔の涙に見える?
「もう一度、愛してるって言って…」
(愛してる)
ねぇ、どれだけ言っても、貴方には聞こえないよ。
何故なら私は、
もう、死んでるのだから…