蜘蛛〜Spider〜
蜘蛛の巣(前編)-2
「あっ、一つ加えていいですか?」
雲形の不機嫌さを察知した松下は、遠慮がちの声で答えた。
「ん?松下なんかあるのか?」
「えー、この非常階段は普段使われてないみたいで、使われるのが、非常時とエレベーターの修理の時だけだとか…それで今日は、特にエレベーターの修理もなかった見たいです」
「松下、んなもんわかっとる!さっき言っただろ!だから不可解なんじゃないか!」
「原田さん、それは俺知らなかったすよ。まぁ、見ればわかるすけど…」
雲形の言葉に原田はすまないと松下の肩に手を当てていた。
「一つ聞いていいっすか?」
「どうした、雲形?」
「この被害者も普段は非常階段つかわないんすよね?」
「あぁ。使わないだろ。被害者は10階に住んでたんだからな。」
「なるほどね…」
そういいながら雲形は階段を降りていった。
「おい!どこにいくんだ?」
「1階。たぶん、手掛かりあると思うんすよ。」
「はぁ?1階に何があるんだ?」
「エレベーターっすよ。犯人は、短時間で犯行に及んだと思いますから。」
「どうしてわかるんだ?」
「じゃないと他の住人も非常階段を使うからすっよ。そしたら犯行がバレますからね。」
「まさか、犯人がだれかわかったのか?」
「いえ、原田さん。流石に現場の状態を聞いただけじゃわからないですって。でも、証拠見つかるはずなんで…」
そういいながら、雲形は1階へと向かって行った。
「原田さん、あの雲形って奴がさっき言ってたついてるってのですか?」
「そうだ。まぁ、見てな。」
原田の言葉に彼が何者なのか、そして1階に何の証拠があるのか全く検討がつかない松下であった。