いつもの場所で-8
「寵と秋坂が俺に教えてくれただろ?生きている限りチャンスはあるって。だから俺、今悠紀と付き合えてるんだぜ?俺と悠紀にチャンスを与えてくれた張本人がチャンスを活かせないでどぉすんだよ。」
そうだ・・・。生きてる限りチャンスはあるんだ。俺何ウジウジしてたんだろ・・・。
恋って人を弱くさせるんだな・・・。
「けど・・・。俺、このままじゃあいつに告白できない・・・。」
こんな弱い俺じゃダメだ。あいつを守れない。
「どぉすんの?ぢゃぁ、告白しねぇの?」
「いや、今度の新人戦、スタメンでゴール決めて優勝したら告る。」
自分に自信もてたら、あいつに告白しよう。辻先輩よりも数倍いい男だって思い知らせるんだ。
「よし、今までブランクあんだからがんばらねぇとな!!」
次の日、新人戦のレギュラーが発表になった。
レギュラーは辻先輩に渡部先輩などの2年生15人と俺を含む一年生8人。
スタメンになれるかわからないけど、とりあえず第一関門突破だ。
「やっぱお前スタメンだったな!」
渡部先輩が声をかけてくれる。
「渡部先輩も!けど、スタメンも狙ってるんで!」
「うわぁ・・・俺奪われないようにしねぇと・・・。なんか今日活き活きしてんなぁ?リーダーとは大違い!」
渡部先輩はしばしば辻先輩のことを『リーダー』と呼ぶ。まぁ、冗談交じりだが。
「辻先輩、まだ復活してないんですか?」
「あぁ・・・あれぢゃぁ、今回スタメン落とすかもなぁ・・・」
辻先輩はうちの学校の有望株だ。なのにスタメン落とすまで落ち込むなんて・・・。
俺はいても立ってもいられなくなり、辻先輩の下に行った。
「辻先輩!!」
辻先輩は着替えてる途中だった。綺麗についた引き締まった筋肉は男でも惚れ惚れするほどだ。
「なんだよ、いきなり・・・。」
「先輩・・・。まだ復活できてないんすね。」
俺は失礼とも思ったが、喝入れるためには仕方ないことだと思った。
「だから・・・?」
少し辻先輩の言葉に棘があった。けど、ここで引き下がれない。
「女にフラれたぐらいでなんなんすか!!いつまでもウジウジして!情けない!男なら見返すぐらいの勢いがなきゃだめじゃないですか!」
少し辻先輩にはつらいかも知れない・・・。けど・・・。
「・・・・まえに・・・お前に何がわかるんだ!!!!」
辻先輩にいきなりむなぐらを掴まれる。
「あいつに・・・俺の気持ちが何がわかるんだよ!!」
「俺、辻先輩が玲緒那とキスしてたの見ました。」
以外に冷静な声が出て俺も驚いた。
「だから、俺、てっきり辻先輩と玲緒那が付き合ってるんだって思いました。辻先輩に勝てないって思って見ひきました。けど、勘違いだったってわかって俺、戸惑いました。がむしゃらにサッカーやって。忘れようとしてるときだったんで。」
「え・・・?だってお前そんな風に・・・・てっきり俺・・・」
辻先輩が戸惑った様子を見せる。なんでかはわからないけど、俺には気にしている余裕はなかった。
「けど、生きている限りチャンスあるんだって気づいて、俺あいつに告白しようと思います。優勝したらの話ですけどね。」
今までにないぐらいいい笑顔で話せたとおもう。
辻先輩に宣戦布告して気持ちが晴れた気がした。
辻先輩が何か言いたげだったが気分が高揚している俺には聞こえなかった。
「じゃ、先輩また明日!!」
俺はスキップするようにそこから走り去った。
辻先輩を励まそうとしてたのに逆に落ち込むようなこと言ったときづいたのは家に帰ってご飯食べて一息ついたときだった。
「・・・・あいつには敵わないな・・・」
辻先輩が俺が走り去った部室でそう呟いた。