今は。そしてこれからもずっと・・・-15
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…「くすくす…そうですね…魔物から私を守ってくれる王子様」
…僕は…蒲乃菜にとって王子様なんかじゃないんだ…
…魔物。蒲乃菜が口にした僕に対する言葉…
…そう。僕は魔物なんだ。蒲乃菜にとって。恐怖の対象なんだ。
…なら、いいよ。僕は魔物になるよ。蒲乃菜にとって恐怖の存在になる。
…蒲乃菜が僕の事をそう思うのなら…
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身体の中から俺の身を焦がすような悲しみと怒りの炎が湧いて来る。
そして激情にまかせて蒲乃菜の髪を握りしめる。
「酷いだと!?ならばお前のした事はどうなんだ!」
「えっ…きゃあ!い、痛いやめて!」
髪を握りしめて振り回す俺に蒲乃菜は痛みの声を上げる。
「言ってみろ!お前が俺の純情をそこの男と一緒にあざ笑って踏みにじったのは
酷くないというのか!自殺にまで追い詰められた俺の気持ちがわかって堪るかぁ!」
「わ、私…嘲笑ってなんか…いません…」
生真面目な蒲乃菜ゆえにそれを否定するが、それは火に油を注ぐ結果となる。
「黙れ!黙らないとこの男ともどもぶち殺してやるぞ!」
「ご、ごめんなさい……」
男の名を出されたとたん蒲乃菜は従順になった。
しかし、それは俺にとって不愉快な事でしかなかった。
…それは、蒲乃菜がその男のことを大切に想っている証だから。
俺は、怒りに歪ませた顔のまま蒲乃菜の耳元で呟く。
「…お前の気持ちは良く分かった。ではこの男と一緒に殺してやろう。」
「…っ!そ、それだけはやめて!何でもしますから…」
蒲乃菜にとってその男は命よりも大切らしい。
必死に俺に懇願して来る蒲乃菜。
「………」
「お願い…します。」
俺はどこまで蒲乃菜が俺の責めに耐えられるのかを試してみたくなった。
…それは、俺を傷つける結果になる事は明らかだったのに。