今は。そしてこれからもずっと・・・-13
壊夢〜永遠の絶望〜
街の一角にある古びた廃ビル。
バブルの建設ラッシュに乗じて建設され、その後の不況で持ち主のいないビルだ。
そこに、先程捕らえたばかりの蒲乃菜と例の男を連れ込む。
ふたりとも意識はない。
冷たい鋼鉄の柱。
そこに蒲乃菜を縛り付け、その正面には男を縛り付ける。
舞台と役者は揃った。
これから、絶望という名の演劇が上映される。
あとは上演を待つばかりだ。
「……ん…」
「……あ…」
椅子に座していた所、しばらくも経たぬうちに二人は目を覚ます。
「…やあ。ひさしぶりだな。いつぞやの時以来か。」
「…っ!?ど、どうして…」
「お、お前は…」
俺の顔を見るなり二人に驚きと恐怖が浮かぶ。
…いいぞ。俺のもっとも好きな表情だ。
「どうやら二人とも俺を覚えていたみたいだね。光栄な事だよ。」
どうも蒲乃菜と話すと以前の自分が出てくるみたいだ。
「ああ…蒲乃菜…僕が大好きだった女の子。でも、君は僕を拒絶してあざ笑ったよね。
僕は君がとても憎い。だから、絶望と苦痛を味わって苦しんでよ。それで僕が癒されるんだ。」
狂おしい笑顔を浮かべて蒲乃菜を見つめる。
俺から目をそむける蒲乃菜に俺を睨みつける男。
「さて…どうしてやろうか…蒲乃菜。」
顔をそむける蒲乃菜の顎先を持ち、こちらを向かせる。
きらきらと澄んだ純な瞳。
それを見ると虫酸がはしり俺は思わず顔をしかめた。
「…嫌な目をしている。今からそれを俺の色で埋めつくてやろう。」
「お前ぇ!蒲乃菜に触るなぁ!」
嫌がる蒲乃菜にキスをしようとした俺の背後から男の罵声が飛ぶ。
…やりかけていたキスを中断して、男の方に振り向いてやる。
「ならば、お前が助けてやったらどうだ? それとも、お前は吠えることしか出来ない犬なのか。
はははっは…!王子様を気取っておいてこの有様か。」
「くっ…!くそぅ…蒲乃菜…」
「さあ…蒲乃菜…」
「い、嫌ぁ…」
俺との口付けを拒んで、蒲乃菜はブンブンと顔を振る。
「嫌か。」