告白前夜-3
場所は駅前の喫茶店の中。どこにでもあるようなコーヒー店。けれど店内は思った以上に広く、落ち着いた雰囲気のあるところだった。
あたしはセンパイにすべてを話した。あたしが彩夏さんにどういう想いを寄せているのか。真人くんからの告白。あたしがどうすべきかを。
すべて話したときにはセンパイは少し考えるような顔であたしに言う。
『そっか。まったく彩夏の事で苦労かけるわね。』
『いえ。あたしが勝手に一人で悩んでいるから。彩夏さんのせいじゃないです。』
そんなあたしを穏やかに見つめながら華帆センパイは言う。
『じゃあ、涼子ちゃんは彩夏が好きじゃないって思っているの?』
あたしは先週の真人くんとの会話を思い出し、視線を空に逸らす。
『それは。だってあたしたち友達だから。それに女の子同士だから。センパイだってあたしの事可笑しいって思っているんでしょ?だったら、あたし真人くんと付き合ったほうがいいかなって。あれっ?何言っているんだろうあたし。』
そんな事を言いながらあたしの視線は下に落ち、うつむきがちな様子のままで話していた。
あたしは頭の上に手で撫でられたことに気付く。
『まったく。涼子ちゃんは本当に可愛いわね。あたしも彩夏に嫉妬しちゃうわ。』
『センパイ?』
センパイの手は小さいのに暖かく、優しかった。
『誰も可笑しいなんて思うわけないじゃない。誰かの事を好きになってしまったら、それを止める権利なんて誰にもないわ。例え好きになったのが彩夏の事でも。ね?』
あたしは彩夏さんの好き。そしてそれを止める権利なんて誰ももたない。センパイの一言一言があたし不安を取り払ってくれた。
勇気が湧いた。決意することができた。あたしはうつむいていた顔をあげる。
『ありがとうございました。センパイ。あたし、自分の気持ちに正直になろうと思います。真人くんには悪いかも知れないけれど、あたしも彩夏さんが好きっていう気持ちは強いからやっぱり譲れません』
そう言ったあたしは笑っていた。きっとそれは今日で一番自然な笑みだった。『うん。涼子ちゃんは本当に可愛い。だから絶対に幸せになってね。』
そう言ってセンパイの手があたしの髪をやさしく撫でる。心地よい感触にしばらく浸りながら、あたしは気持ちを伝える決意を固めた。