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長い友達
【学園物 恋愛小説】

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長い友達-1

そりゃもう、最悪な振られ方だった。
いや、世の中広いから、俺より酷い振られ方をした奴もいるだろう。
とりあえず、酷い降られ方だった。

三年の和浦祥子先輩。吹奏楽部の部長で、ちょこっと頭は悪いけど、とても良い人だった。
何度か俺もクラリネットの指導をしてもらって、優しい笑顔を見せてもらって、いつの間にか惚れていた。
自分は口下手ではなかったけど、上手でもなかった。白昼堂々の告白の選択肢は最初から無い。
電話やメールじゃ気持ちは伝わらないし、知ってる訳でもない。
色々模索して、出した答えは『二人で残った時に告白』
シチュエーションはこうだ。部長はいつも鍵閉めの為に遅く残る。一旦部活から帰るふりをして、俺はトイレで待機。ある程度他の部員が帰り、程よい時間に再突入。忘れ物をしたと言って先輩と部室に入り、そこで告白…
我ながら、穴の無い作戦だった。最近居残りは結構やってたし、先輩との親密も悪くはない。
「告白すれば、間違いなく勝てる…」
取らぬ狸の皮算用である。
俺は全ての要素を確認し、完璧な作戦を実行したのである。
問題は、たった一つの情報を入手してなかったのである。
和浦先輩には彼氏がいたのだ。
文字にすると不吉な13字になるこの言葉。同じ部活でありながら、まったく知らなかった事実だ。先輩の事は完璧にリサーチしてたと言うのに…
まぁ、ただ単に彼氏がいて告白したら振られたってならまだマシだ。救いようがある。
満を持して突入した俺はもうその場で自決したくなった。

存分にその彼氏とキッッッッスされておりました。

いや、笑わないで欲しい。マジで辛かったんだって。本当に。
憧れの純潔と思われたその優しき先輩がよ?
どこぞの誰とも知らない馬の骨によ?
接吻なされてるとですな?

俺は絶望の前に唖然としてたよ。
その彼氏は先輩の長い黒髪をぐしゃぐしゃに撫で回してた。俺も触りたかったよ。その髪。
固まってる俺を、先輩は睨んだ。
「何見てるのよあんたなんかお呼びじゃないのよウジムシが」
いや、実際言われた訳じゃないけど、目がそう言っていた。
始めて見た、先輩の軽蔑の目だった。

「ブフゥッ…アッハッハッハッハ…そんで?そんなに息を切らしながら逃げてきた訳だ」
いつもの公園のブランコ。子供の頃から良く来ていた所だ。
近所にまで聞こえる大音量で、こいつは笑い飛ばしやがった。
「戦略的撤退だ」
「ぷ…ククク…かっこつけるな…余計笑える…ククッ」
このムカつく笑い方をするポニーテールは島原和美。幼稚園からの幼馴染で、クラスメートで、やっぱりムカつく奴だ。
こう言う場合は励ますとか、労をねぎらうとか、何か幼馴染的な事をして欲しいのに…
「励ますゥ?冗談!戦力情報を軽んじたあんたが悪いんでしょ。そんな奴に何を言えば良いって言うのよ」
くそ…やっぱり話すんじゃなかった…
「あ、次回からのアドバイスとかを言えば良いか。うん。流石あたし。天才だわ」
と、見て分かるよう、こいつは人の傷をえぐって楽しむ、構内最強のSなのだ。


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