伊藤美弥の悩み 〜受難〜-4
「はあっ、あっ……」
貴之はがくがくと震えている美弥の唇を奪い、所嫌わずキスを降らせる。
「んぅ、んぇっ……!」
嫌悪感から身をよじる美弥の蜜壺に、貴之は指を侵入させた。
「すご……締まる……」
愛しげに纏わり付いて来る肉襞の感触に、貴之は呻く。
「一回イッたみたいだし、これだけ濡れてるし……な、いいだろ?」
『いいだろ』が何を意味するかに気が付いて、美弥は激しく頭を振った。
「駄目ッ、駄目よっ……お兄ちゃん、頭おかしくなってるだけ!」
その言葉に、貴之は自虐的な笑みを浮かべる。
「妹に欲情するなんて、普通じゃない事くらいは分かるさ」
「そうじゃないのっ!!」
まさか実兄にまで効くとは思わなかったが、おそらくは稔の作ったフェロモン薬が作用して、貴之にこんな異常な行動を取らせているのだ。
それを理解させたいのに、パニックを起こした頭ではまともな言葉が出てこず、口をぱくぱくさせるばかりである。
「行くぞ」
貴之はもどかしげに下衣を落とし、膣口へそれを押し当てる。
「は……初めてなのっ!!」
ようやく出て来た言葉は、およそ抑止力という物に欠けていた。
「処女か……嬉しいな。美弥は、俺が初めての男なんだな」
ちゅぷ……
「いっ……!」
みぢっという感触で、美弥は処女膜に傷がついた事を知る。
「あああああ……!」
痛みはないが、異物感と共にモノが押し入って来た。
「っく……美弥、締め方きつい……」
貴之は慎重に腰を押し進め……やがて先端が、堅い肉へゴツリとぶつかる。
「ははっ……子宮、届いたんだ」
「ひ……」
「美弥……膣(なか)、きつい……も、駄目。動くぞ」
生まれ出た快楽に耐えられず、貴之は腰を振り始めた。
「いっ……ああああああああっ……!?」
結合部から聞こえる淫らな水音に、美弥は顔を歪める。
「やめっ、抜いっ……あ、あはあああああっ!!」
膣内を掻き混ぜられ、美弥は悶えた。
「気持ち、良いだろ?」
兄の問い掛けに、美弥は力なく首を横に振る。
兄妹という血の濃さが、強い快楽へと結び付くのだろうか。
「嘘は言うなよ」
ぐちゅっ!じゅぶう!ずちゅずちゅずちゅ!
「あーーーっ!!」
体をのけ反らせ、美弥は悦楽の声を上げる。
「な、俺、イク!イクからな!」
しばらくして、貴之は腰の動きを速めた。
「やああああっ!!」
美弥の叫びには構わず、貴之は激しく腰を振り……果てる。
美弥のお腹の上に、白濁液が撒き散らされた。
「ば……かぁあ……!!」
ようやく自由に動くようになった口で、美弥は兄を罵る。
「どうして事情を聞かないで、暴走するのよおっ!!」
「――え?」
美弥はかいつまんで、稔から受けた被害の事を説明したのだった……。
事情を知って底無しに落ち込む貴之を放って、翌日美弥は学校へ行った。
二人で顔を突き合わせていると、陰気な事この上ない。
泣きたいのは、美弥の方なのに。
――近所の高校に通っているので、美弥は自転車通学をしている。
もしも電車を利用していたら、痴漢に遭ってにっちもさっちもいかなくなっていただろう。
「はあぁぁぁ……」
校舎裏で、美弥は本日五度目の陰気なため息をついた。
その手は途中のコンビニで買って来たパンを、ぐにぐにと揉み潰している。
朝食を摂らずに家を出て来たのでお腹は空いているはずなのだが、食欲はまるで湧かなかった。
近親相姦。
その四文字が、背中へ重くのしかかる。
「……はあぁ」
――キーンコーンカーンコーン……
一時間目を告げるチャイムが鳴るのが聞こえたが、動こうという気は全く起こらなかった。
「……ここまで来といて何だけど……今日は、サボろう」
いつも真面目に授業を受けているとはいえ、この状況では受講しても身に付くとは思えない。
その決意を口に出すと、心はいくらか晴れやかになった。
「よし、時間潰して帰ろう」
再び決意を口に出し、美弥は立ち上がる。
が、硬直した。
いつの間にか少年が二人、美弥の傍に来ていたのだ。
「いい匂いがするから来てみれば……」
少年の一人が、そう言う。
「あ……パン!パンの匂いでしょ!?私食べないから、あげるわ!!」
昨夜に続いて貞操の危機が迫って来た美弥は、事態を打破すべく叫んだ。
「そ、それじゃあねっ!さよならッ!」
くるりと踵を返して逃げようとした美弥の体に、二人の少年が取り付く!
「逃げるな!ヤラせろよ!」
以上が、美弥の曝されている危機である。