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オーディン
【ファンタジー その他小説】

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オーディン第五話『悩めるオーナー・後編』-1

「いい加減にしてください」
館“ヴァルハラ”から叫び声が聞こえた。
ヴァルハラの中では五人の人物が大きな円卓を囲んでいた。
「スルトが世界を脅かす…、信じ難い」
カブリエル…長く美しい髪、エメラルドの目をもっている。見た目は美しいが剣の腕は確か。
「……」
ラファエル…力強い眉、顎ひげが印象的な男。スルトに関して興味がなく、話し合いの場で今まで一度も口を開いておらず、いつもそっぽを向いている。
「ルシファー、あなたの組織した“コート”、それでは間に合わないと言いたいのですか」
ウリエル…眼鏡の下の鋭い目から、常に殺気のようなものを感じさせる。他の者は腰に剣をさげているが、それに加えて彼は常時巻物を腰周りにつけている。
「我々は世界を救った、“ラグナロク”を未然に防いだのだ、今更奴に何ができる」
ミカエル…黄金色の短い髪をもつが…、その顔は私に似ているらしい。

ブロンドで背広を着た者が席を立ち、皆の顔を見渡していた。その表情は困惑したものだった。
「ルシファー分かった、とりあず座れ」
ミカエルがそう言うと、困惑した表情のままルシファーは席に戻った。
「多数決で決める、今の立場を捨て“古の神々”を復活させる事に賛成の者、挙手せよ…」
手を上げたのはルシファーただ一人だけだった。小さな嘲笑いが聞こえた。勢いよくミカエルが手を叩く。
「はい、ここまで、復活させたければ“コート”を使え、スルトを倒すのに“疫病神”たちの力など必要ないと思うがな」
ミカエルがそう言い終えた時、ルシファーは既にヴァルハラの外にいた。
「勝てるものか…」
ルシファーは消えそうな声でそう呟いた。




「悪かったよ、しかし君はいつも私の話をまともに聞こうとしなかっただろ」
脇にビルの建ち並ぶ大きな道路の真ん中で、ルシファーは男と話していた。雷鳴が轟いている。
男は背中から大きな剣を抜いて、それを構えた。
「“シグルト”私に協力してくれ、礼はする、もちろんお前から奪った黒い車も返そう」
「当然だ」
シグルトと呼ばれた青年は剣構えたまま、ルシファーを睨みつけた。
「そんな怖い顔をするなよ、話はそんな難しい事じゃないんだ」
「断わる」
シグルトは即答した。しかしルシファーはそれに動じる事なく、口を開いた。
「君のレストラン、大丈夫かな…、何でも“ベルセルク社”があの辺りの汚染を調査するとか」
「貴様…」
シグルトは剣に力をこめて地面を切りつけると、それを背中におさめた。微笑むルシファー、シグルトは完全に彼のペースにのまれていた。
「ようやく聞く気になってくれましたか」
「早く話せ」
ルシファーは咳払いをする、シグルトの反応はなかった。ルシファーはもう一度咳払いをしてから話しだした。
「スルトと言う化け物が人間界を襲っています、それを止めたいのですが…」
「分かった、で俺の“黒鉄竜”は」
「最後まで聞いてください、あなたではスルトを倒せません、あなたにはスルトを倒せる者たちを見つけもらいたいのです」
一瞬シグルトの表情が曇ったが、返事をするとすぐに車の場所を尋ねた。ルシファーは溜め息をつくと、一つビルを指差し、詳しい場所を伝えた。
「黒鉄竜」
シグルトは教えられた部屋の扉を蹴破って入った。倒れた扉がホコリを舞い上げた。


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