「ごみすて」-4
男はストッキングごと、パンツを千佳の膝まで下ろした。水色のショーツは、丸く、柔らかな尻を隠すような大きさではなかった。暴れたせいで、その生地は細く尻の間に食い込んでいた。
「ははあ、確かに毛は薄そうだね」
ショーツを掴み、覗く。
「見ないで! こんなの、おかしいです!」
男の視線から逃げようと、千佳は腰を振る。しかしそれは、生地を深く食い込ませるだけだった。
「なんで、なんでこんなこと…」
引きつれた生地の両側から、柔らかい唇と、そこに点々と生えた毛が現れる。
「おや、パンティに染みがあるね」
『パンティ』という単語を強調する、ねっちりした声。
「感じて、濡れてるのかい。彼氏とエッチしたのを思い出したのかな」
耳元で『エッチした』という単語を強めにしてささやく。
千佳は泣きながら首を振った。濡れる訳がない。さっき吐きそうになった瞬間、少しだけ尿を漏らしてしまっていたのだ。
「濡れてるですって?」
演技たっぷりに、女が腕を組む。
「島田さん、あなたおかしいんじゃないの? 怒られて興奮してるの?」
二人が千佳の後ろでかがんだ。
ほら、と男がショーツの染みを指でつつく。
「きゃぅっ!」
電流が走ったように、びくん、と千佳の背中がのけぞる。得体の知れない二人組に触られるのが、気を失いそうなほど気持ち悪かった。
「嫌だわ。あなた怒られて、触られるのが好きなの? 汚らわしい」
「ち、違いますっ、それは…」
女はゴム手袋をした指を、千佳のショーツの中に滑りこませた。
「きひゃぅっ!」
「ほんと。濡れてるわね。島田さんって、鞭で叩かれたりすると悦ぶ変態? マゾヒストだっけ? アレなんでしょ」
指が、ぐにぐにと閉ざされた場所を揉む。千佳は必死で抵抗する。しかしうつぶせで、両手を固定されているのだ。
「うぇっ…いやぁ…」
動けない。女の指が、ぷっくりと膨らんだ扉を往復する。愛撫ではない。検査のような、嬲るような動き。
呼吸が出来ない。喉が鳴る。めまいがする。
「やめてっ」
叫んだ瞬間、そこが熱くなり、膀胱が痙攣した。
ショーツの染みが、じわりと大きくなった。ショーツを通して、滴が垂れる。
「ほら、どんどん濡れてるじゃないの」
それが千佳のどこから出た液体なのか、すぐに想像できるはずなのに、女は気付かない振りで指を動かし続ける。指先のゴムが、乾いたままの肉厚の扉をこじ開けてキュッと音を立てる。
「許して、ごめんなさい、ごめんなさいっ!」
自分のマンションのすぐ近く。こんなところを他人に見られたら…。千佳は血が出そうなくらい、唇を噛んだ。
「あら? だって苛められると嬉しいんでしょ? どんな男が相手でも、大きな声を上げて、毎晩、いやらしいことをしてばっかりなんでしょう?」
女の指が乾いた秘花のふちで小刻みに動く。
男は生地を両側からいっぱいに伸ばし、裂こうとした。締まった尻肉が左右に揺れる。ショーツの隙間から、黒く艶やかな毛が覗く。深く合わさった扉が、指から逃げるようにきゅっと締まる。
「こんなの…ないよぉ…」
腕が使えない千佳の顔はアスファルトに押し付けられ、頬には擦り傷ができていた。ジャケットがずれ、地面に着いた白いシャツが黒く汚れた。漏らしたものが、ショーツの前まで染めていた。黒い毛が透ける。
「こんなとこまで濡らすの? やっぱり変態ね、あなた」
女の中指が千佳を責める。他の四本の指は、閉じようとする真っ白な尻の割れ目を広げる。
「ち、違います…。お…おしっこですっ」
そう言った瞬間、伸ばされていた生地が腰のあたりで破けた。びぃっと音を立ててショーツが裂けていく。
「おしっこ? そんな年になっておもらし? なんて人かしら」
「そういう趣味なんじゃないか? 世の中、変な人も多いからね」
二人の姿は千佳からは見えない。それが余計に恥ずかしさをあおった。うつぶせで、剥き出しになった尻を上げさせられ、二人の汚れた指で弄られている。無理に広げられた尻の間からは、ぼんやりと色づいた性器も、そして排泄のための皺ばった器官も丸見えだった。
「ふん、あんまりきれいじゃないな、若いくせに」
「遊び過ぎなのよ、きっと。ほら見て。ここなんて紫色で、ぶよぶよしてるわ」
ぐいと千佳の扉を両側に引っ張る。
「ひはぁっ!」
内蔵が風に晒されたような冷たさを感じて身体をよじる。背中で重ねて縛られた親指が、折れそうだった。
「臭いがきついな、さっき小便を漏らしたからかな」
男が千佳の尻の間に顔を寄せ、くんと鼻を鳴らした。その鼻息が毛をそよがせ、真珠に当たる。恥ずかしさと悔しさで、涙が止まらない。
「そうねぇ。ひどい臭いだわ。でも毛は短く刈ってるのね。さっきの毛は、やっぱりこの人と寝た男のなんだわ」
「な、なんで、こんな酷いこと…」
男は無言で千佳の尻を両手で押さえ、裂けるほどに広げる。