無銭湯記スパゲッチュー 〜復路〜-5
第25話『マジカル・ヒストリー』
「やーい、やーい、バカ魔道士ぃ」
「ヒーリング(簡単な回復魔法)も使えないくせに、生意気なんだよお前っ!」
数人の男の子が幼い女の子をいじめて、騒いで居た。
女の子は泣きながら、
「ヒーリングなんか使えなくてもいいもん……」
と言い張る。
そんな言葉を聞いてか、悪ガキ達は、
「ほかに何が出来るんだよ、このバーカ」
「やれるもんなら、やってみろよー!」
と、囃し立てる。
するとその女の子、フェアリアス・フォン・ベナクール5歳はこう呟いた。
「ピカ・ドン……」
その瞬間、強烈な閃光があたりを照らし出し。
この日、アズラエル東方『セント・マリエヒルズ市』は、壊滅した。
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お昼の一時。女子校生達の会話。
「ねえねえ、サッカー部のベーカム君って、すてきよねー」
「かっこいいしー、はんさむだしー」
「演劇部のペヨン君も良いよねーぇ! 彼女とか居るのかなぁ」
そんな所へ、クラスの委員長が駆け込んで来て、血相を変えて言った。
「大変っ! 大変っ! ベーカム君がサッカーの練習中にケガしたって!!」
途端に騒ぎ出す女の子達。
「嫌ぁーん! 死なないでベーカム様ぁ〜!」
「だれか魔法で治療してあげてよ!!」
すると。
「わっ! 私がやりますわ!」
と、フェアリアス・フォン・ベナクール17歳が、名乗りを上げた。
「わぁーーー! フェアリアスさん! やっ止めてくれーーー!!」
そう叫びながら、もがき苦しむベーカムを他所に。
強烈な閃光があたり一面を照らし出すと。
この日、アズラエル南方『王立聖魔高校』は、壊滅した。
〜〜〜〜〜
黒魔法協会『ギルド』の最高導師が、教壇の上から言った。
「今日は簡単な実験をしよう。え〜とぉ……ベナクール君前へ」
「はい……」
導師に呼ばれ、フェアリアス・フォン・ベナクール19歳は、途惑いながらも、教室最前列の教壇へと上がった。
「ではベナクール君、このコップの中の水を魔法でお湯に変えてみなさい」
導師に言われ、フェアリアスは得意の魔法を使った。
その瞬間、強烈な閃光が辺り一面を照らし出し。
この日、首都アズラエル『黒魔法協会ギルド本部』は、壊滅した。
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「このおろか者めがぁ! 我がベナクール家の家名に泥を塗りおって、我が娘ながら情けないわぁ!!」
その日、名紋貴族の頭首は、怒り心頭だった。
「お父様っ! そのような言い方、余りにも酷いですわっ!」
フィリスの、父への口答へが火に油を注ぐと。
「バカ者っ! どこの世界に使う魔法全てが、核爆発を起こしてしまうような、まぬけな魔道士がおると言うのだ!」
益々持って、実の父である党首の機嫌を損ねるのであった。
だがそんな父の怒り狂う姿を見て、フィリスも悔しかったのだろう。
「ほ……他にも使える魔法は沢山有りますわよっ!」
と、見得も切るが。
「ほかに何が出来るというんだ、やって見せろ!」
どうやら父の怒りは収まらない様子である。
ならばとばかりに、フィリスは呪文を唱えて見せた。
すると……
強烈な閃光が辺り一面を照らし出し。
その日、アズラエル西方『高級貴族ベナクール邸』は、その永期に渡る栄光の歴史と共に、壊滅した。
つづく