白に赤に私と君-1
『ねぇ、これ』
外は雪。
時々目の端に入る曇った窓ガラスを気にしないようにしながら。
『なに』
君はそのしかめっ面を私に見せる。
そんな君を私は愛している。
『見てくれてもいいのに』
両手を君の前から消す。
『超頑張ったんだよ?』
そして、君の代わりに自分の両手を褒めるのだ。
『よくそんなの出来るよ。俺には分かんね』
いいの。
君にこの手を誉めてもらおうなんて思ってない。
車はどこに向かって走ってるんだろう。そういえば、去年もこの道を通った。
あの頃は、まだ私の両手には何もなかった。
『この道、覚えてる?』
雪がライトに移って時折眩しい。
『うん、初めて貴方が好きだって言ってくれた』
『そうだっけ』
いつからだろう。
君が私を見てくれなくなったのは。
ずっと前を見てる。
『好きだって言ってくれたじゃん』
『覚えてないよ』
『じゃあ、何を覚えてるの』
いつからだろう。
私も君に対してイラつき始めたのは。