光の風 〈波動篇〉-15
「構わない。自分の話しやすいように。」
千羅は手でどうぞと促した。照れ笑いしながら頭をかく日向に全くの敵意はない。信じられなくても警戒せずに臨機応変にやっていこう。少し休むのもいいかもしれない。
「言葉も分からなくて、子供が物事を覚えていくように僕は過ごしたんだ。長には本当にお世話になった。」
「いい人にめぐり逢えたな。」
千羅の言葉に満足そうに微笑むと、その目を逸らさずに千羅に向けて言葉を続けた。
「今も僕はめぐり逢いを感じてる。まさか、こんな形だけど仲間に会えるなんて。」
仲間、その言葉に千羅も瑛琳も目が覚めるような思いだった。二人は再びお互いの顔を見合う。瑛琳は静かに笑い、判断を千羅に委ねた。信じてみよう、受け入れてみよう。
「光の神は、ある一国の長でな。どうしても彼を狙うものは後を絶たない。もちろん、彼は強い。しかし不運も重なって彼を狙うものに封印されてしまったんだ。」
「何の為に?」
日向の問いかけに、千羅は無言で首を横に振った。そして再び話を続ける。
「一緒に彼の元へ行ってほしい。そして封印を解いてほしいんだ。」
「もちろん、僕で役に立つなら…。」
「それにはいくつかの問題がある。」
強い口調で日向の言葉をさえぎり、現状を打ち付けた。力付くで連れていくことなど可能だ、しかしあえて全てを話し判断を委ねた上で協力してもらう事に決めた。
さっきまでと違う空気に日向は不安になる。
「自分の力をみて分かるだろう。ここでは有り得ないものだと。しかし、当たり前な場所もある。」
「え?それって…どういう事?」
「地球ではオレ達は異質なんだ。」
千羅の言葉に日向は困惑していた。彼はなんと言ったのだろう。地球、確かにそう言ったみたいだった。
「オレは頭がおかしいと思うか?」
信じられない、でも千羅の眼差しは相変わらず強く真剣だった。その思いに疑う余地はない。
「オレ達は異世界から来た。もちろん、リュナも光の神もそこにいる。」
「異世界…。」
「異世界シードゥルサ、そこがオレ達の世界だ。」
突然の大きな話に日向は次第に言葉を失っていく。信じる信じないの前に、千羅の話を受け入れる事で精一杯だった。
今まで知らなかった事だ、頭の中でどう整理していいか分からない。確かに日向は自分の力に気付いた時、周りはそれは驚いたものだった。結局はどこかサーカス団に所属していたのだろうという話にまとまったが、後で長と二人で話した時にそんな軽いものではない事を知らされた。
長は日向が何の仕掛けもなしに炎を出せる事を知ると彼を呼び二人の時に話をした。決してその秘密を話してはいけないと。あくまで仕掛けあってこその物と通すようにと、真剣な顔で話した。
その時に日向は悟ったのだ、自分は異質な者であると。