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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈波動篇〉-11

姿を現した2本の石碑は、まるで支え合うようにクロスしている。その石碑に守られるような形で光る水晶玉に一同の視線は釘づけになった。

うっすらと光る水晶玉はやがて強い光を放ち、日向は反射的に目を覆う。

《封印解除と!》

「え!?ふ、封印解除!?」

日向の言葉に反応し、さらに強い光と風が彼を襲う。叫び声と共にまたも日向は吹き飛ばされてしまった。

《マスター!》

「いてぇよぉ…。」

同じ場所をぶつけ日向は半泣きで祷に訴えてみた。しかし、弱まった光と風の先に日向が見たものは宙に浮く人の姿。

白くふわふわとしたドレスを身にまとい、長い髪を風になびかせている。清楚で可憐、そんな言葉が良く似合っていた。たがよく見ると純白のドレスにはいくつかの血の跡がある。

彼女のドレスには生々しい戦いの跡が確かに残されていた。

ゆっくりと大地に近づいていく体。祷に促され急いで彼女を受けとめに行った。当然のことながら彼女の意識はない。

 色素の薄い肌。ピンク色の長い髪はふわふわと彼女の体に舞い降りた。日向にとって有り得ない髪の色でも不思議と綺麗と思える雰囲気を持っている。

「軽いな。この子は誰?」

抱きとめたはいいが、一体何なのか日向は全く理解できていないようだった。お姫様だっこで腕の中に受けとめた女性。血の付いたドレスと彼女の雰囲気は、あまりにも合わなかった。

「血が付いてる…怪我してるのかな?」

《戒めの水は癒しでもある。怪我をしている訳ではないわ。》

社の言葉に日向は思わず安堵の笑みをこぼした。それが本心であること、社は信じて言葉を続ける。

《彼女の名はリュナ・ウィルサ。遠い異世界からこの地に飛ばされ守られてきた我が主。》

「リュナ・ウィルサ?」

固く目を閉じたままの彼女を見つめ名を呼んでみた。もちろん応えるはずはない。

不思議と水に濡れていたはずの体や髪はその様子を見せず乾いていた。ここにあるのが火と風だからだろうか。ただ一つ乾いていないのは、彼女の目からこぼれる涙だけだった。

《主人を…貴方に任せてもいいでしょうか?》

自分ではどうする事もできないもどかしさを抱え、風の精霊・社は日向の目を見て願い出た。驚きながらも、腕の中のリュナを見つめる。

「やっべ。オレ見付けだした後の事…何にも考えていなかったや。どうしよ祷?」

《どうしよって…マスター、もうお心はお決まりなのでしょう?》

祷が覗き込むと日向は優しい顔で微笑んでいた。もう思いも覚悟も決まっているようだ。


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