17才の花嫁(第4章)-1
17才の花嫁(第4章)
智花は、吉祥寺駅前の京急百貸店で下着を買って館内のトイレで身につけた。
阿部祐太は5階の書店で待っていた。
「お待たせしました」
「セクシーな、おパンツ 買いましたか?」
「もォー」
智花は肘で祐太の脇腹をつついた。
二人は百貸店を出て、智花の叔母が入院してる病院へ向かう。
「叔母さん、私が家を出ることを許してくれるかなあ?」
「とにかく、叔父のことは言わないほうがいいと思う。家を出る理由は、自立したくなったということ。それで押し通すべきだな」
「はい、そうします」
30分ほど経って、祐太のブルーバードは中野区にある総合病院の駐車場に入った。
「俺はここで待っているから、叔母さんとゆっくり話をしてきなさい」
「阿部先生、ありがとう」
駐車場を出て、遊歩道を歩く。道の両脇に広葉樹が生い茂り、鬱蒼とした雰囲気だった。薄闇の中、智花は足早に病院の正面玄関へ向かった。
玄関を入って、正面の壁に設置されている掛け時計を見た。8時10分。(叔母さん、変に思うかもしれない…)
智花が見舞いに訪れる時間は、決まって夕方だった。
エレベーターを降り、リノリウムの廊下を歩いた。消灯には時間があるから叔母はまだ起きているだろう。
「智花ちゃん、どうしたの?こんな時間に?」
「あの…話があるんです。わたし、ひとり暮らししたくなって…」
「えっ?どういうこと?」
叔母はうろたえた。
「社会勉強のため、アルバイトしながら学校へ通いたいんです」
「…うちでの暮らしがいやになったの?」
「いえ、違います。自立したくて…」
「何か私に隠してるわね…。朋美とケンカでもしたの?」
「叔母さん、すみません、わがまま言って…」
智花は頭を下げて、病院をあとにした。
章朗とのことは言えなかった。自分に非があるわけではないが、叔母が真実を知れば、吉田家の中に重苦しい空気が流れるだろう。平穏な暮らしを壊したくなかった。
智花は祐太と吉田家へ向かった。
「今夜から叔父さんの家を出たい…」
「それがいいと思う。とりあえず今夜は、俺のアパートに泊まるか?俺は…近くにあるサウナで寝るかな」
「そんなのわるいです」
「かまわないよ」
ブルーバードは中井の住宅街に入った。
(章朗がどんなことを言ってきても、無視しなくては…)
ブラウス、Tシャツ、スカート、靴下、下着などの衣類。その他、必要最低限の物を持ちだそうと思った。
玄関のドアを開けると、物音に気付いたのか、章朗がキッチンから出てきた。
「遅かったじゃないか。ずっと待ってたんだよ」苦い愛想笑いを浮かべた。
智花は答えずに靴を脱いで、家に上がった。章朗は足早に寄ってきた。智花は顔をそむけて、横を擦り抜けようとした。章朗は獣のように素早かった。ふいに背中を抱きしめられた。
「朋美がカレーを作ったんだ。食べなさい」
智花の胸のふくらみに手を伸ばしてきた。ブラウスの上から乳房を鷲掴みにされた。
「放して!」
智花はもがいて、逃れようとした。
肘で章朗の胸を押して、腕を振りほどいた。
智花は、背後から襞スカートを捲り上げられた。
「助けて!」
玄関のドアが開き、祐太が駆け込んできてくれた。
「なんだ、お前は?」
「中学の教師、阿部祐太だ」
祐太は、章朗を睨みつけた。
「祐太は、わたしの彼氏なの」
一瞬、祐太は、目をぱちくりさせて『寝耳に水』って顔をした。
「彼氏…お前たちつきあってるのか…」
「そうです」
章朗は驚愕した。ガタガタと震えだして膝をついた。
「今日は祐太の家に泊まるの」
「あなたのことは智花さんからすべて聞いています」
鬼神のような顔で章朗を睨みつけた。祐太のこんな恐い顔を見るのは初めてだった。
いつのまにか家に上がっていた祐太と、二階の自分の部屋にはいり、わずかな衣類とケータイなどをリュックサックと紙袋に詰めた。