Twilight Closse Ⅳ ～消失～-1
Twilight Closse Ⅳ ～消失～
そう言う訳で、俺は奥山のマンションにやってきた。
今回は前回の失敗を生かし、奥山用と家用に食材を分けて買ってきてる。
昨日の今日で普通ならあり得ない事だが、ひょっとしたらまた餓死しそうになってるかも知れない。用心に過ぎると言うことは無いしな。
３度目の死体（違）には慣れていた。と言うより、飽きていた。うつ伏せの奥山を尻目に台所へ歩いていった。
空腹うつ伏せ定理なんて定理、コイツで証明出来るんじゃないか？
流石に連続お粥は嫌だろう。他の胃に優しい食べ物にしよう。コンソメスープとかな。
うん。なかなか良い味だ。全部奥山にやるのは勿体無い位だな、これは。
ふと、奥山の方を見てみる。どうやら今日は、匂いに反応して立ち上がれる位の余力があったようだ。ネコの様な半月目で、俺をじっっと見てきた。つか、本当にネコっぽい。
「出来たぞ。今皿に注ぐから」
奥山はピクンと反応した。
流石に、ネコの様になめて飲む真似はしなかった。したらしたで困るが、少し見てみたい気もした。
ぐびぐび飲むだろうと思ってたが、今日は全然そんな感じじゃない。
「コンソメスープ、嫌いだったか？」
ふるふると、横に首を振った。一緒に買ってきた安物バターロールをコンソメに浸して食う姿は、嘘を言ってる様には見えない。
一体何が起きたのやら…
きちんとスプーンを皿に起き、奥山は手を合わせて「ごちそうさま」をした。
俺はさっきから気になってた事を、一つ一つ聞いた。
「旨かったか？」
首を縦に振り、肯定。
「お前、一人暮らしか？」
これにも肯定。
「飯とかどうしてんだ？今までカップ麺だったみたいだが」
奥山は口を開いた。開いただけだ。でも言葉は出てこない。
「どうした？」
「あ…ぅ…ぁうあ…」
発された言葉は、意味を持たなかった。
「は？何て？」
「ぅえ…ん…ぅ」
喋れない。そんなカンジだ。上手く呂律が回ってないし、何より、本人が一番驚いてる。
余り表情を使ってなかった様で、少しいびつだったが。
「言葉を…無くしたのか？」
昔読んだ物語を思い出した。病気で隔離されてた人が、長い間対話をしなかったせいで、言葉を喋れなくなってしまう話だ。
最初にその本を読んだとき、絶対嘘の作り話だと思っていた。たった一ヶ月で、言葉を忘れたりしないって。
「…マジかよ…」
自分の認識の甘さに痛感し、同時に、人の脆さに愕然とした。
…何とかしてやりたい
「おい」
「？」
「明日から、毎日来てやるよ」
奥山は驚いて(やっぱりいびつだった)俺を見た。
「お前が人並みの生活水準になってちゃんと喋れる様になって学校くるまで、放課後にお前の家に行くからな」
奥山は首を横に振り、否定をした。構うもんか。
「じゃ、今日は帰るから。またな」
逃げるように俺はマンションの一室の扉を閉めた。