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僕とお姉様
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僕とお姉様〜第一歩〜-1

ほんの少しの仮眠の後、僕は学校へ行く準備を始めた。

父さんは出勤、ひばりちゃんも既に登校済み。
僕はベッドで深い眠りについてるお姉様を横目で気にしながら制服に着替える。
うつぶせの大の字で爆睡してるその口からはうっすら涎らしき液体が流れてる。
『据え膳食わぬは男の恥』って最初に言い出した奴にこの姿を見せてやりたいな、なんてくだらない事を考えながら学校へ向かった。

県立西工業高校、電子機械科。全校生徒の7割が男子のこの学校でクラスに女子が1人もいないのはこの科だけ。むさ苦しさも男臭さも昨日までは他人事だった。僕にはひばりちゃんがいると思っていたから。それが幻に終わった今、360度男だらけのこの空間が腹立たしくて仕方ない。
当然その日の授業の内容は一切頭に入らなかった。既に地元企業への就職も決まり普通に登校さえすれば卒業も確実な僕にとって学校なんてどうでもいい。
問題は家。
実の父と好きな女の子が夫婦として生活してる場に簡単に入り込めるほど僕の精神は図太くできてないのだ。
昼休みに入っても名案など浮かぶ筈もなく、頭を抱えてうなだれる僕を不審がって誰も声をかけてこない。すると突然ポケットの中で携帯が低く唸った。
着信…、家から?
こんな昼間に家に誰かいるわけないし。でもディスプレイに現れてるのは間違いなく登録されてる家の電話番号だ。
怪しがりながらもその電話に出ることにした。

「…はい」
『あ、山田?』

女、この呼び方…

「おね…っ」

お姉様と叫びかけて慌てて口をつぐんだ。このむさい空間にそんな単語はタブーだ。
僕はこの日初めて席を立ち、急いで廊下に出た。

『やっぱり、ここ山田の家なんだー』

電話の向こうからは呑気な声が聞こえる。

「何でいるんですか!起きたら帰って下さいよ。大体何で携帯番号知ってるんですかっ」
『家の電話の短縮に入ってたから。そっか、今学校だね。じゃあ帰って来るまで留守番してるよ』
「はっ!?」
『それじゃ勉強頑張ってねー』
「おいっ、話はまだ―…」
『ブツッ、ツー、ツー、』

何て一方的なやりとりだ。それよりあの口振りからすると、あの人昨日の事を全部覚えてる?
さぁっと血の気が引いた。
ヤバいぞ。
父さんやひばりちゃんが戻る前に、余計な事を話される前に、絶対にお姉様には帰ってもらわなければ!!!!
すぐに教室に戻って荷物を整え、近くにいた友達に

「調子悪いから帰る」

とだけ伝えてダッシュで帰宅した。


「ただいま!」

家に飛び込んで靴を脱ぎ捨て、笑い声のする居間へ向かうとそこには座椅子に腰掛けてテレビを見てるうちには似つかわしくない存在がいた。

「あれ?山田おかえり。早いじゃん」

お姉様は振り返ってそう言った。テーブルの上には食べ終えたカップラーメンの容器、しかも着ている服は僕の物じゃないか!

「何勝手に人んちあさってんすか!!」
「だってお腹空いたし服も汚れてたし、あとシャワーも借りた」

悪びれる様子もなく、当然連れ帰った僕に感謝する気配もない。親切心なんか起こすんじゃなかった…


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